建設業で外国人材を採用するには?在留資格別に徹底解説
2022-05-12 06:16:46
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建設業の現場でよく見かけるようになった技能実習生ですが、
「技能実習生ってどうやって雇用するの?」
「うちで受け入れはできるんだろうか?」
といった疑問をお持ちの方も多いかと思います。
そこで本記事では、建設業で技能実習生を雇用するために知っておきたい基礎知識と実務上の注意点についてご紹介します。
建設業で働く外国人材を在留資格別に把握したい場合は、以下の記事をご覧ください。
技能実習制度とは?
技能実習制度とは、開発途上国出身の人材に、日本の企業で、母国では習得困難な技能を習得してもらうための制度です。
帰国後に、修得した技能を活かして母国の発展に貢献してもらうことを目的としています。
建設業では近年技能実習生の受け入れが急速に進んでいます。以下のグラフからは、この10年で技能実習生の数が急増していることが分かります。
(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況について」をリフト株式会社で加工)
なお、2020年の建設業全体の外国人労働者数のうち、約70%を技能実習生が占めています。国際貢献を理念とする技能実習制度ですが、実際は建設業の人手不足解消のために利用されているとみて間違いないでしょう。
どんな業務に従事できるの?
では、技能実習生はどんな業務に従事できるのでしょうか?
技能実習生が従事できるのは、下記の表の22職種33作業に限定されています。
※1号技能実習のみの場合は、この限りではありません。
(厚生労働省「移行対象職種・作業一覧」より作成)
基本的に、技能実習生は現場作業に従事することができます。
受け入れの要件は?
ここからは、建設業で技能実習生を受け入れるために満たすべき要件を解説いたします。
全産業で共通の要件と建設業に特有の要件に分けて見ていきましょう。
全産業に共通の要件
①欠格事由に該当していないこと
まず1つ目は、法律で定められた欠格事由に該当していないことです。
欠格事由とは、以下の4点になります。
a. 関係法律による刑罰を受けた
・禁錮以上の刑に処せられた者
・技能実習法や入管法、労働関係法令に違反し、罰金刑に処せられた者
・暴力団関係法、刑法等に違反し、罰金刑に処せられた者
・社会保険各法及び労働保険各法に違反し、罰金刑に処せられた者
b. 技能実習法による処分等を受けた
c. 申請者等の行為能力・役員等の適格性
・行為能力に制限がある者(成年被後見人、被保佐人、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者)
・法人の役員、未成年の法定代理人で欠格事由に該当する者
d. 暴力団排除の観点からの欠格事由
②監理団体に加入すること
技能実習生を受け入れるには、「監理団体」と呼ばれる非営利団体に加入する必要があります。
監理団体とは、技能実習生の募集や受け入れまでの手続き、そして受け入れ後に企業の監査や指導を行う団体です。
令和3年3月1日時点で監理団体は全国に計3,245団体あり、その中から自社のニーズに合った監理団体を選ぶことになります。
選ぶ際には、監理団体の所在地や扱っている国・職種、過去の実績などを判断材料にしましょう。
※技能実習制度において、技能実習生の雇用には「団体監理型」と「企業単独型」の2つのタイプがあり、97%の企業が「団体監理型」に該当します。この団体監理型で受け入れを行う場合に、監理団体への加入が必要になります。
※ちなみに「企業単独型」とは、比較的規模の大きい企業が、自社の海外支店や関連企業などから職員を技能実習生として雇用する方式です。
③技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員を配置すること
技能実習生を受け入れるには、
a. 技能実習責任者
b. 技能実習指導員
c. 生活指導員
を配置しなければなりません。以下でそれぞれ説明します。
a. 技能実習責任者
技能実習責任者とは、技能実習生に関わる職員の監督や実習の進捗状況の管理などを行う人です。
技能実習責任者になれるのは、実習を行う事業所の常勤職員で、次で説明する「技能実習指導員」や「生活指導員」を監督できる立場にある人です。
また、技能実習責任者となるには、過去3年以内に養成講習を受講しておく必要があります。
b. 技能実習指導員
技能実習指導員とは、実習生に業務を教え、技能修得の指導をする人です。
技能実習指導員になれるのは、当該業務で実務経験を5年以上積んだ、実習を行う事業所の常勤の職員です。
c. 生活指導員
生活指導員とは、実習生の日本での生活を指導する人です。技能実習生の生活状況を把握し、相談に乗るなどして問題の発生を未然に防ぐ役割があります。
生活指導員になれるのは、実習を行う事業所の常勤の職員です。
④技能実習生の住居を確保すること
技能実習生を受け入れるには、技能実習生のための住居を用意する必要があります。
アパートや戸建てを借り上げて住んでもらう、すでに所有している社宅を提供するなどが一般的です。住居の広さは、1人あたりパーソナルスペースが4.5㎡以上と法律で決められています。
また住居だけでなく、Wi-Fiなどの生活インフラや、寝具や机などの最低限の家具も揃えておかなければなりません。
⑤賃金を同業務に従事する日本人と同額以上に設定すること
技能実習生の賃金は、同じ業務に従事する日本人と同額以上にしなければなりません。
外国人だからと言って不当に安い賃金で働かせるのは法令違反です。違反すると技能実習生の受け入れが一定期間できなくなるので、正当な賃金を支払うようにしましょう。
⑥社会保険に加入させること
技能実習生を受け入れる際には、技能実習生を社会保険に加入させなければなりません。
外国人だからと言って、健康保険や労災保険などの社会保険への加入義務がなくなるわけではありません。
なお、これ以外に「外国人技能実習生総合保険」などの任意保険にも加入することができます。
⑦帳簿を作成・保管すること
技能実習生を受け入れる際には、規則で定められた帳簿を作成・保管しなければなりません。
定められた帳簿とは、技能実習生への指導内容を記録する「技能実習日誌」や、技能実習の状況を管理する「認定計画の履行状況に係る管理簿」などがあります。
受け入れ企業は、これらの帳簿を作成し、事業所において技能実習修了後も1年間保管しておかなければなりません。
建設業に特有の要件
※技能実習計画において、日本標準産業分類Dー建設業を選択している企業が建設業に該当するとみなされます。
①建設業許可を取っていること
技能実習生を受け入れる企業は、建設業法第3条に基づき建設業許可を受けている必要があります。
本来、500万円未満の工事や150㎡未満の木造住宅工事、1500万円未満の建築一式工事のみを請け負う企業では建設業許可の取得が必須ではありませんが、技能実習生を受け入れるためには、建設業許可を受けていなくてはなりません。
②建設キャリアアップシステムに登録していること
技能実習生を受け入れるには、企業と実習生の両方が建設キャリアアップシステムに登録する必要があります。
建設キャリアアップシステムとは、技能者一人ひとりの就業実績や資格を登録しておくシステムのことで、申請は、オンラインでも行うことができます。
技能実習生の登録は当該実習生が2号に移行するまでに完了させれば問題ありませんが、企業の登録は実習生の受け入れ前にあらかじめ済ませる必要があります。
③月給制にすること
建設業で働く技能実習生への報酬は、月給制にしなければなりません。
ほかの日本人社員が日給制や時給制の場合でも、技能実習生には月給制で給与を支払わなければならないので、注意が必要です。
日給制や時給制をとる建設業で、特に失踪などのトラブルが増加していることから導入された規定です。
以上が、技能実習生を受け入れる際に満たすべき要件です。技能実習生の雇用を決めたら、自社が以上の要件を満たしているかどうか、満たせるかどうか必ず確認しましょう。
働ける期間は?
技能実習生は、日本でどれくらいの期間働くことができるのでしょうか?
技能実習生が働ける期間は、最大5年間です。
技能実習制度では、1年目が技能実習1号、2~3年目が技能実習2号、4~5年目が技能実習3号に分類されています。
技能実習3号への移行が可能なのは、後述する優良認定を受けた企業のみです。したがって、優良認定を受けていない企業は、最大で3年間のみの受け入れとなります。
「最大で」というのは、技能実習生は技能実習1号→2号、2号→3号に移行するタイミングで「技能検定」を受験する必要があり、これに落ちてしまうと実習を修了して帰国しなければならないからです。(一度だけ再受験が可能です。)
技能検定の合格率は決して低くはありませんが、もし技能実習1号→2号のタイミングの技能検定(基礎級)に落ちてしまうと、たった1年で帰国しなければならなくなります。
受け入れ企業は、自社で雇用する実習生が試験に合格できるよう、技術面や日本語のサポートすることが求められます。
何人まで受け入れられるの?
技能実習生は、何人まで受け入れられるのでしょうか?受け入れ人数に制限はあるのでしょうか?
結論から言えば、技能実習生の受け入れ人数には制限があり、それは受け入れ方式や技能実習生の段階によって異なります。
通常は、以下の表に基づいて受け入れ可能人数が決定します。
【基本人数枠】
技能実習1号=基本人数枠
技能実習2号
常勤職員の人数
受け入れ可能人数
受け入れ可能人数
301人~
常勤職員の1/20
基本人数枠の2倍
201~300人
15人
101~200人
10人
51~100人
6人
41~50人
5人
31~40人
4人
~30人
3人
※「常勤職員の数」とは、実習実施者に継続的に雇用されている社員の人数です。すでに働いている技能実習生や1号特定技能外国人は、常勤職員数には含まれません。
注意が必要な点として、建設業においては、上記の枠にかかわらず、技能実習生の受け入れ可能人数は、常勤職員の総数を超えてはならないと決められています。
したがって、例えば常勤職員が2人の企業では、技能実習生は2人までしか受け入れることができません。
なお、次で説明する優良認定を受けている企業であれば、「技能実習生の総数が常勤の職員の総数を超えないこと」という要件は適用除外となります。
優良な実習実施者とは?
ここからは、何度かでてきた「優良認定」について解説いたします。
優良認定とは、省令で定められたいくつかの基準をクリアし、外国人技能実習機構に「優良要件適合申告書」を提出して受けられるものです。
優良認定を受けた企業は「優良な実習実施者」と呼ばれます。
優良な実習実施者は、
・自社の技能実習生の、技能実習3号への移行が可能になる
・基本人数枠より多くの技能実習生を受け入れることができる
ようになります。
※監理団体も、一般管理事業に係る管理許可を受けた優良団体である必要があります。
なお、優良な実習実施者に適用される人数枠とは、先ほどの表の2倍の人数です。
また技能実習3号の場合は、基本人数枠の3倍まで受け入れ可能となっていますので、他社からの技能実習生を受け入れることも可能になります。
【優良な実習実施者の場合】
技能実習1号=基本人数枠の2倍
技能実習2号
常勤職員の人数
受け入れ可能人数
受け入れ可能人数
300人~
常勤職員の1/10
基本人数枠の4倍
201~300人
30人
101~200人
20人
51~100人
12人
41~50人
10人
31~40人
8人
~30人
6人
雇用する場合の費用相場は?
技能実習生を雇用するにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
まず理解して頂きたいのが、技能実習生は決して安い労働力ではないということです。「外国人=安く雇える」という認識があるかもしれませんが、外国人であっても、働きに見合った正当な給与を支払う意識を持つようにしてください。
要件のところで書きましたが、技能実習生の給与は、日本人と同等以上でなければならないと法律で定められています。
給与以外にも、監理団体への加入費や、在留資格の申請費用、技能実習生の渡航費、そして講習費や検定受験費などの教育費用が別途かかります。
これらを合わせると1名あたり3年間で70万円、5年間で100万円ほどです。
また、監理団体に支払う月々の監理費用が、1人当たり25,000円~40,000円ほどかかります。
技能実習生受け入れの注意点は?
ここからは、技能実習生の受け入れに当たって、知っておくべき注意点を解説いたします。
技能実習生の失踪についてのニュースは、よく目にすると思いますが、建設業は、技能実習生の失踪者数が非常に多いです。
主な失踪理由としては、
・低賃金や賃金不払い
・長時間労働や休日出勤
・就労場所の変わりやすさ
・厳しい叱責や、暴力などの度を越した教育
などが考えられます。
こういったトラブルを防ぐために、労基法や技能実習法を遵守し、実習生が働きやすい環境を整える責任は、雇用企業にあります。
お互いにとって最善の結果になるように、ぜひ想像力を働かせて、技能実習生の置かれた状況を考えながら、積極的にコミュニケーションをとっていきましょう。
採用から入社までの流れは?
ここからは、技能実習生の採用から入社までの流れを解説いたします。
以下の図は、一連の流れを示したものです。
技能実習生の受け入れを決めたら、まずは監理団体に加入しましょう。
監理団体は、職種や作業、その他希望条件に合わせて求人情報を提供してくれます。それをもとに、面接を行いましょう。
面接で採用が決まったら、次は技能実習計画を策定し、「技能実習計画認定申請」を行う必要があります。
技能実習計画とは、技能実習生本人や受け入れ企業の情報や、技能実習をどのように進めていくかを示す書類になります。技能実習計画の策定にあたっては、要件のところで説明した、技能実習責任者等の配置や、住居の準備を行う必要があります。
技能実習計画を策定し、技能実習計画認定申請が許可されると、次は在留資格の申請になります。一連の申請業務は、監理団体がサポートをしてくれるのが一般的です。
在留資格申請が許可されると、いよいよ入国です。ただ、技能実習生は入国後に約1か月間、監理団体が行う日本語や日本での生活に関する研修を受講しなければなりません。
それらを終え、やっと就労開始です。
採用してから就労開始まで、半年ほどはかかると考えておきましょう。