ブログ

お役立ち情報 一覧

労務コンプライアンスとは?会社の信用を守るために知っておきたいこと

労務コンプライアンスとは?会社の信用を守るために知っておきたいこと

ミーティング

コンプライアンス(compliance)とは、「(規則や法則、要求などに対する)遵守、適合性」を表す英語です。企業におけるコンプライアンスとは、「法令・企業倫理を守ること」と言い換えられます。

その中でも労働関係法令を守り労務管理を行うことを、「労務コンプライアンス」と呼びます。労務管理は働きやすい職場環境を整えることで労働者のモチベーションを維持し、経営上の目標を達成するサポートを行うという目的があります。

企業に対する社会的な評価のまなざしが強まり、より高い透明性を求められるようになった昨今、コンプライアンスを守れていることは、もはや特別なことではありません。労務コンプライアンスを改めて意識し、労働者や求職者、また世間一般からの信用を守ることは必要不可欠です。

就業規則が労務コンプライアンスの基準

常時10人以上の従業員を雇用している企業は、「就業規則」を作成し、自社の基本的な労働条件を定める必要があります。また、就業規則を労働基準監督署に提出しなければなりません。

就業規則はどのような内容でも自由に定めて良いわけではなく、労働基準法をはじめとする労働関連法にもとづいて規則を決めることが求められます。労務管理は原則として就業規則を基準として行われるため、就業規則そのものが各種法令に反していると、自然と労務コンプライアンスも守れなくなってしまいます。

経営者が必ずしも労働関連法に精通しているとは限りません。そのため、「自社の利益のために法律に反した規則にしてしまおう」と考えたわけではなくても、コンプライアンスに反した就業規則を作成してしまう可能性があります。

そのような事態を避けるため、社会保険労務士や弁護士といった労働関連法に詳しい専門家に相談し、法律に則った就業規則を作成することが重要です。

労務コンプライアンス遵守意識を高め、リスクを未然に防ぐ

チェック

労務コンプライアンスがおざなりにされることは、企業に様々なリスクをもたらします。

長時間労働や残業代の未払い、各種ハラスメントなどが常態化し見逃され続けることが、労使間の信用関係喪失、また企業の評判低下につながることは近年になって認知されるようになってきました。

ただ単に企業の評判が落ちるだけにとどまらず、離職率が高まり業務が立ち行かなくなるリスクや、労働基準監督署の行政調査を受けて行政処分されるといったリスクも同時に高まるでしょう。

たとえ労務コンプライアンスにもとづいて定められた就業規則を定めている企業であっても、社員の労務コンプライアンス遵守意識が低ければ、実際の運用面でギャップが生まれる可能性はあります。

労務に携わる社員だけではなく、企業のトップから一般の従業員にいたるまで「規則は守るもの」という考えを浸透させ、労務コンプライアンス意識の高い組織にしていくことが必要です。

チェックリストで現場から労務コンプライアンス意識を高める

チェックリスト

一口に「労務コンプライアンス意識を高める」といっても、ただスローガンとして言い続けるだけでは社内の文化を変えることは難しいでしょう。

労務コンプライアンスに関わる要素は経営層の判断にも大きく関わる部分であるため、現場だけが意識を高めても「結局何も変わらないじゃないか」と呆れられることにもなりかねません。「労務コンプライアンスを守ることは、企業の根本的な価値観である」と代表自らが実践する姿勢を積極的に見せていくなど、上層部から労務コンプライアンスに則った経営を意識していく必要があります。

労務コンプライアンスが守れているかどうかを見直す際には、社労士や弁護士といった専門家のチェックを受けることが確実な方法です。現場レベルで確認をする方法としては、簡潔なチェックリストを用いて一定期間ごとに評価を行う方法があります。

評価項目には、次のような内容が考えられます。

項目 内容
労働条件 採用時、また労働条件変更時に条件を記載した書面を労働者に交付しているか。
(常時10人以上の従業員を雇用している場合)就業規則を作成し、労働基準監督署に提出しているか。
採用時、および定期的な健康診断を実施しているか。
一定要件に該当する労働者を雇用保険に加入させているか。
常時雇用する労働者を社会保険(厚生年金・健康保険)に加入させているか。
労働時間・有給 時間外労働・休日労働の労使協定を締結した上で、時間外労働をさせているか。
法定年次有給休暇を与えているか。
有給休暇を取得した労働者に対して、不利益な取り扱いをしていないか。
毎週最低でも1日の休日を与えているか。
賃金 都道府県によって異なる最低賃金以上の金額を支払っているか。
時間外労働・休日労働を行った労働者に、法定割増賃金(時間外:+25%以上 休日:+35%以上 月60時間を超える場合は+50%以上)を支払っているか。
22時~翌5時の間に労働(深夜労働)を行った場合、法定割増賃金(+25%以上)を支払っているか。
業務上の罰則による減給は法定の範囲(1回の罰則で平均賃金の1日分の半額まで。複数に渡っても1回の賃金支払期につき賃金の10分の1まで)で行っているか。
育児・介護など 婚姻・妊娠・出産・産前産後休暇を取得したことを理由に、不利益な取り扱いをしていないか。
労働者の請求に応じて、産前休暇を与えているか。
産後8週間が経っていない労働者を働かせていないか。※産後6週間を経過し、かつ医師が認める場合は就業させてもよい。
出産・育児・介護に関する制度利用の申し出があった場合、また制度を利用した場合に、不利益な扱いをしていないか。
高年齢者の雇用確保 定年は60歳以上か。※定年を定めている場合に限る。
65歳までの高年齢者雇用確保制度(1.定年引き上げ 2.継続雇用制度の導入 3.定年の廃止 のいずれか)が整備されているか。
解雇・雇い止め・無期転換 解雇予告をしたうえで解雇をしているか。※解雇予告は30日以上前に行う必要がある。予告をしない場合、30日分以上の平均賃金を支払う。
客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められる解雇事由が就業規則に定められているか。
一定の条件に適う労働者の雇い止めを行う場合、最低でも契約満了日の30日以上前に予告をしているか。※一定の条件=3回以上契約を更新している。または雇用後1年以上継続勤務している。
一定の条件に適う労働者について、無期雇用契約転換の申し出に対応しているか。※一定の条件=雇用契約を5年以上更新しており、労働者から申し出があった場合。

労務コンプライアンスは企業と労働者を守る

労務コンプライアンスの内容は、主に「労働者が働きやすい環境を整えること」に重きが置かれています。そのため使用者からすると、少々不自由に感じる部分もあるかもしれません。特にこれまで慣習的に行われてきたことが、急に「コンプライアンス上不適切」と言われても、すぐに対応することが難しい可能性もあります。

とはいえ労務コンプライアンスが求めているのは、あくまで「法律に定められた最低限の条件」です。「こうでなければ仕事が回らないから」「法律に従うと経営が立ち行かないから」といった言い訳をしても、違法な行為であることに違いはありません。

違法行為を見逃したまま経営を続け、「最低限の条件すら満たせない企業」と見られることは、長い目で見れば結局自社に悪影響を及ぼします。

特に現代では、退職した労働者がSNSや転職口コミサイトなどを通じて、企業の内実を良かれ悪しかれ発信できてしまいます。悪い評判が流布されるのを防ぎ、周囲に良いイメージを持ってもらうためにも、労務コンプライアンスを遵守する文化を根付かせることが必要です。

ブログ

お役立ち情報 一覧

アルバイト募集中の企業がすべき「興味をもたれる求人方法」とは?

アルバイト募集中の企業がすべき「興味をもたれる求人方法」とは?

オフィス

企業や店舗などで働く人手が不足している場合、業種に合った能力を持つアルバイトを雇うことで解決しようとするケースは少なくないでしょう。アルバイトを雇い入れたいときには、求人サイトやチラシ、ハローワークといった何らかの求人媒体を利用することが一般的です。

ただ求人情報を公開すれば人が集まるというわけではなく、アルバイトに任せたい仕事の内容が伝わり、かつ「応募してみようかな」とやる気にさせる情報を打ち出す必要があります。多くの応募を集めやすい求人方法と、主な求人媒体について解説します。

応募を集めやすい求人情報

悩む人

アルバイトを雇いたいからといってやみくもに求人サイトなどに情報を掲載しても、求めている人材が集まるとは限りません。場合によっては満足に応募数が集まらず乏しい選択肢の中から選ばなければならなかったり、そもそも雇うことができなかったりする可能性もあります。

また求人媒体は掲載費がかかる場合が多いので、うまく欲しい人材とマッチできなければ無駄なコストが発生してしまうことも考えられるでしょう。

必要以上に手間をかけず、効率よくアルバイトを雇用するためには求人情報の提示方法を工夫する必要があります。

「どんな人に働いてほしいか」を明確にする

求人媒体を利用してアルバイトの募集を始める前に、まずは「自社で働いてほしいのはこんな人」という人物像をハッキリと定めることが必要です。

最終的にどういう属性や能力を持っている人を採用したいのかが決まっていなければ、「どの媒体に掲載するか」「どういう書き方でアピールするか」「入社後どういう仕事を任せるか」といった人材募集に必要な要素も定まりません。

「テレアポ採用なのでハキハキ明るく喋れる人を集めたい」「DTPデザインができる人なら、最低限コミュニケーションが取れればいい」「とにかくPCでの入力作業が早い人に入社してほしい」など、求める人材のビジョンを明らかにすることで、自然と採用時の基準づくりにもなるでしょう。

仕事内容や待遇を具体的に記載する

求人媒体にはアルバイト求人に応募する人が気になる情報を、曖昧にせず具体的に記載しましょう。「どんな仕事内容なのか」「給料はどれくらいなのか」「福利厚生はどうか」といった点は、特に求職者が興味を持つ部分です。それぞれ正確な情報を提供することで、求める人材とのミスマッチも起きにくくなるでしょう。

欲しい人材が集まる求人媒体を選ぶ

求める人材の属性によって、利用すべき求人媒体も変わってきます。「とりあえず大手求人サイトに掲載しておこう」「ハローワークを利用すればいいか」といった考えでは、欲しい人材を得る機会を逃してしまうかもしれません。

求人媒体によって集まりやすい業種・職種や年代、性別はある程度特色があります。特殊な業界であれば、業界特化型の求人媒体を利用するのもよいでしょう。

いずれにしても、自社のニーズに合った媒体を選ぶことが重要です。

代表的なアルバイト求人方法12種を紹介

チーム

現在、アルバイトを募集できる求人媒体は多く、人手が欲しい企業にとっても仕事が欲しい求職者にとっても情報を得やすい時代です。媒体の特徴や集まる人材の志向、採用までにかかる費用などの要素を比較し、自社の条件に合う媒体を利用するとよいでしょう。

ハローワーク

掲載費用 ・無料
人材の傾向 ・新卒~高齢者まで幅広い年齢層が利用
・未経験者、専門スキルの無い人、非クリエイティブ職も多い
活用法 ・求人票の項目を具体的に書く
・職業紹介部門の職員からアドバイスを受ける
メリット ・ネット、リアル双方に求人情報を掲載できる
・ハローワークから人材の直接紹介を受けられる
・掲載内容を変更して集まりやすさなどをテストできる
その他の特徴 ・新卒、障害者、母子家庭、フリーターの雇用支援なども行っている
・全国の自治体に544箇所設置
・新規求職者数(常用(パートタイム含む))は約460万人(令和元年度)※参照:厚生労働省「公共職業安定所(ハローワーク)の 主な取組と実績」p.5

チラシ・店舗掲示物

掲載費用 ・無料(印刷費のみ)
人材の傾向 ・配布先の地域の人
・店舗ユーザー、ファン
活用法 ・店頭で配布、店舗に張り出すなど、店舗と直接つながる形で人目に触れさせる
・店舗スタッフが自作することで、求職者に親しみをもってもらう
・完全現場主導ではなく、本社と連携して記載内容を正確にする
メリット ・店舗を中心に配布することになるので、近隣の通いやすい人が採用できる可能性が高い
その他の特徴 ・現場で制作する場合、その他業務との兼ね合いで完成が遅れがち

求人サイト・アルバイト情報誌

掲載費用 ・有料(5000円程度~10万円オーバー/週と、媒体によって異なる)
人材の傾向 ・大手の『タウンワーク』を参考にするとWEBサイトは10代~20代までの若年層が比較的多い
・紙メディアは10代~50代までまんべんなく利用(同タウンワーク参考)
・媒体ごとに若干特色あり※参照:タウンワーク(関東エリア)メディアガイドリクルート「商品紹介パンフレット」内
活用法 ・各媒体の担当者と話しながら特徴を掴み、適切な訴求をする
・人気が高い求人には大量に応募が来るので、効率の良い選定方法を考える
メリット ・利用者数が非常に多い(大手のタウンワークはWEB版の月間UU数は約1700万人※2021年6月時点)

※参照:Similarweb “Townwork.net”

その他の特徴 ・かつて主流だった紙媒体が、WEBサイトメインに変わってきている
・期間単位の掲載費が発生するので、成果が上がらなくてもコストだけかかる場合がある

自社WEBサイト・SNS

掲載費用 ・無料(サイト制作を外注する場合は制作費がかかる)
人材の傾向 ・自社サイトやSNSを見ており、ブランドや業態への理解が高い人
活用法 ・自社サイトに「採用ページ」を作り、求人情報をまとめる
・問い合わせフォームや応募フォームを作り、サイト内で応募まで完結させる
・SNSで求人に興味がありそうな層とコミュニケーションをとり、継続的な情報提供を行う
メリット ・運用次第では費用対効果の高い採用活動が可能
・オリジナルのデザインで採用ページを作れる
その他の特徴 ・サイトやSNSの運用次第で大きく成果が変動する
・自社でサイト制作ができない場合、ページの用意や情報の更新に時間的、金銭的コストがかかる

求人検索エンジン

掲載費用 ・無料プラン、有料プラン両方あり
人材の傾向 ・若年層から高齢者まで幅広く利用
・未経験から専門スキル所有者まで、多くのターゲットにリーチできる
活用法 ・Indeedなどの媒体が推奨する情報掲載の仕様に合わせることで、無料プランでも検索結果に表示されやすくなる
・有料プランを使うことで、検索結果で上位表示されるようになる
・ターゲティング設定を正確に行い、掲載内容にマッチするユーザーだけに情報を配信する
メリット ・利用者数が多い(大手のIndeedの月間UU数は2.5億人)
・条件が揃っていれば、求人サイトや自社採用ページに掲載している内容を自動でクローリングし掲載してくれる
・特定のユーザーにのみ情報を表示させるターゲティングが可能※参照:Indeed公式サイト
その他の特徴 ・有料掲載枠が検索結果の最上部に来るため、無料掲載のみだと成果が出にくい可能性もある

教育機関(大学・専門学校など)からの斡旋

掲載費用 ・無料
人材の傾向 ・基本的に学生(10代後半~20代前半)
・学業と両立する必要があるためシフトに制限があることが多い
活用法 ・大学や専門学校などに求人票を提出し、学校の掲示板や求人情報サイトなどに掲示してもらう
メリット ・どの教育機関に求人票を出すかによって、採用できる学生の志向や能力などがある程度絞り込める
その他の特徴 ・求人情報の掲載方法は教育機関ごとに異なるので、各教育機関の公式WEBサイトなどから確認する必要がある

その他の方法

アルバイトを募集するには、ここまでに紹介した方法の他にも、関係者からの紹介してもらったり、採用代行サービスを利用したり、人材派遣サービスを利用したりといった求人方法が考えられます。

社内外の関係者から紹介してもらう場合、実際に本人に会ってから採用するか否かを決めることが重要です。縁故のある人間からの紹介は無条件に受け入れてしまうこともあると思いますが、求めている能力を持っているかどうか事前に確認しておくことが求められます。「信頼できる人間からの紹介だから大丈夫だろう」と安心せずに、通常の採用と同じプロセスで見極めると確実でしょう。

また、採用代行サービス(RPO)は、自社の採用業務を外部に委託し代行してもらうものです。どの求人媒体に掲載するかという戦略を立てたり、面接などの選考プロセスを任せたり、希望に適した人材を紹介したりと採用に関する業務を幅広く外注することができます。採用代行サービスを利用することで自社のリソースを割かずに済むだけでなく、自社に不足している採用業務のノウハウを吸収することもできるでしょう。

人材派遣サービスは派遣契約の労働者を雇用するため厳密にはアルバイトとは異なりますが、「今すぐ条件に見合う能力を持った労働者が必要!」という場合には非常に役に立ちます。人材を派遣する企業との契約を結び一定の紹介料などを支払う必要がありますが、確実に人手不足を解消することが可能です。

自社の採用ニーズにあわせて媒体を選定する

アルバイトを採用する場合も、正社員などを採用する際と同じく自社のニーズにあわせた媒体を選ぶことが重要です。またひとつの媒体に絞らず、欲しい人材が集まりそうな媒体を複数併用することも選択肢に含めるとよいでしょう。

いずれの媒体でも、掲載している求人情報の定期的な見直しや効果測定を行うことで、より効率よく人材を確保できるようになっていくと考えられます。

ブログ

お役立ち情報 一覧

Googleも取り入れている構造化面接とは?心理学に基づいた質問例も提案

Googleも取り入れている構造化面接とは?心理学に基づいた質問例も提案

構造化面接採用

「採用ミスマッチの防止」は、あらゆる企業の人事担当にとって最重要課題の1つです。自社に適した人材を見つけるためには、「面接」において必要な情報を的確に引き出すことが求められます。

面接の際、担当者間で重視するポイントが違ったり、応募者ごとにまったく異なる質問をしていたりすると、面接内容の比較が難しくなるでしょう。結果として採用基準にブレが生じてしまえば、必然的に選考の精度は低下してしまいます。

採用の精度を保つためには、面接担当者や応募者が誰であっても再現可能な方法を用意することが有効です。近年、再現性を高めることに重きを置いた面接方法として、あらかじめ定めたテンプレートに従って面接を進める「構造化面接」という手法が注目されています。

この記事では、構造化面接の概要や、導入時の流れを解説したうえで、実際の面接に応用できる質問例を紹介していきます。

構造化面接とは

採用面接

構造化面接(structured interview)とは、「あらかじめ形を定められた面接」のことを指しています。具体的には、どの回答者にも「同じ質問」を「同じ順序で」行う面接方法です。

もともとは臨床心理学におけるデータ集積の手法として定着したものであり、研究調査の現場で被験者の回答内容を定量的に分析・検証する目的で利用されています。

現在ではGoogleをはじめ、採用の場に構造化面接を取り入れる企業も見られるようになり、ビジネスにおける有効性が知られるようになりました。

もちろん、ただ「決まった質問をする」だけでは十分に効果を得ることはできません。採用要件に照らした適切な質問内容の選定や、回答に対する体系化された評価指標など、システムを整えることではじめて構造化面接の利点を引き出すことができるのです。

たとえばGoogleの採用面接においては、「すべての応募者に同じ質問をして、同じ尺度で回答を採点し、事前に決められた一貫した採用要件に基づいて採用を決定」するシステムが運用されています。

(参照・引用:Google re:Work「ガイド: 構造化面接を実施する」

つまり構造化面接の本質は、「面接のマニュアル化」というポイントにあるのではなく、「明確な基準に基づく採用過程の体系化」という点にあるといえるでしょう。要件に照らしながら、システマティックに質問内容や評価基準を設定していくことで、選考プロセスを合理化・効率化することがこの手法の本旨です。

構造化面接を導入している企業のうちには、面接を全面的に構造化している企業だけではなく、部分的に「非構造化面接」や「半構造化面接」の手法を取り入れる企業も存在します。以下では、この2つの面接方法についても簡単に紹介していきます。

非構造化面接とは

非構造化面接は、構造化面接と同様、もともとは臨床心理学分野で使われていた用語です。カウンセリングなど、回答者から自由な反応を引き出す目的で用いられ、話の軸を固定しないオープンな質問を特徴としています。

たとえば「○○についてどう思いますか?」など、大きなテーマだけを設定し、回答に応じて面接の流れを展開させていく形が一般的です。積極的な相づちや、相手の話を繰り返すことによって話しやすい空気を作りながら、掘り下げたいポイントについて質問を深めていきます。

質問者が回答者のことを理解することはもちろん、回答者が受け答えを通じて自身への「気づき」を得る、ということが趣旨とされていることも多いです。そのため実際に導入する際には、「明確な内容を聞き出す」というよりも、「着地点を決めずに、共感ベースで話を進めていく」という前提のもと、展開を組み立てることになるでしょう。

採用面接の手法としては、柔軟な展開により応募者の個性を引き出しやすいメリットがある一方で、流れが面接担当者の経験に依存しやすく、応募者との相性によって引き出せる内容が異なるといったリスクも存在します。

半構造化面接とは

「半構造化面接」とは、あらかじめ質問を用意しつつ、話の流れに応じて質問の内容や順序、ニュアンスを変化させていく面接方法です。

面接に一定の枠組みを持たせることで、その趣旨を見失わないようにしつつ、個々の回答者に合わせて質問を掘り下げていけるメリットがあります。

いくつか必須の質問を用意しつつ、流れに合わせて追加の質問を行うなど、多くの採用面接で取り入れられている手法です。

構造化面接のメリット

質問項目

質問内容をマニュアル化することのメリットとして、まず思いつくのは「面接官の負担が減る」「時間を短縮できる」といったリソース面のポイントかもしれません。しかし、構造化面接はこうした外形的なメリットに留まらず、採用過程そのものを効率化・合理化できる可能性を秘めた手法です。

以下では、構造化面接によって期待できるメリットについて、具体的に解説します。

話の流れに左右されない

あらかじめ質問の内容・順番を固定しておくことで、話の内容や流れに左右されることなく面接を進められるようになります。そのため、「聞きたいことが聞けなかった」という失敗のリスクを抑えられるでしょう。

構造化されていない面接の場合には、面接官の経験や回答者との相性に依存する面が多くなりますが、構造化面接においてはこれらの「ブレ」を最小限に留められるため、客観的データを引き出しやすいと考えられます。

しかし面接をマニュアル化することで、その質を一定以上に保つことができる一方で、マニュアル外の内容を聞き出したり、評価したりすることには向いていません。そのため「話の流れに合わせて聞きたいポイントを掘り下げる」という展開は難しいでしょう。

比較検証が容易

質問の内容や順序を均一にすることは、複数の応募者を客観的に比較するうえでも有効です。面接が行われた時期や場所にかかわらず、同様のフレームワークで比較検証が可能なため、評価の客観性も担保しやすくなります。

さらに、過去のデータからフィードバックを得やすいことも、構造化面接の特徴です。面接時の回答内容と、入社後のパフォーマンスの相関性などを追跡調査することで、その後の採用効率を高められるでしょう。

そのため、採用方針が確定しており、長期にわたって多くの応募者を評価する必要があるケースにおいて、構造化面接はとりわけ効果的に働くと考えられます。

応募者の「納得感」が高い

構造化面接は企業側のメリットはもちろん、応募者側にとってのメリットにもつながります。

たとえば、Googleが自社の採用面接を受けた応募者からのフィードバックを分析したところ、「構造化面接を受けて不採用になった応募者の満足度」は、構造化面接を受けずに不採用になった場合よりも「35%」も高い数値をマークしたとされています。

(参照:Google re:Work「ガイド: 構造化面接を実施する」

面接を受けた応募者に見られる満足度の高さは、構造化面接が「受ける側」にとっても公平かつ客観的に思えることを示しています。このような「納得感」は、応募者側のメリットに留まるものではありません。面接を進めていくなかで、「公平に対応してくれている」という印象が得られれば、それだけ積極的な回答も引き出しやすくなるはずです。

採用制度に対する応募者の信頼感は、「話しやすさ」につながり、ひいては豊富な判断材料を提供してもらうことにもつながるでしょう。

ブログ

お役立ち情報 一覧

カジュアル面談とは?実施するメリットや基本的な流れについて解説

カジュアル面談とは?実施するメリットや基本的な流れについて解説

採用
経営者や人事担当者の頭を悩ませる課題の一つに、内定辞退や早期退職があります。これを防ぐためには、事前に企業と求職者の間で相互理解を深めておくことが大切です。

そこで今回は、近年導入する企業が増加している「カジュアル面談」について解説していきます。企業側に主導権がある採用面接とは異なり、双方向でコミュニケーションが取れるカジュアル面談は、お互いの理解を深める手段として効果的です。実際に導入することでどのようなメリットが得られるのか、ここで確認していきましょう。

また、後半では、カジュアル面談の基本的な流れやポイントについても解説していきます。導入を検討している方はもちろん、導入したけれど成果が出ていないと感じている方も、ぜひ参考にしてみてください。

カジュアル面談とは

カジュアル面談とは、選考の前段階で実施される合否を伴わない面談です。合否判定を目的とした採用面接とは異なり、求職者と企業の相互理解を深めることが主な目的となります。

カジュアル面談と面接の違い

カジュアル面談と面接の大きな違いは「合否判定の有無」です。

面接は選考の場であり、最終的に採用の合否を判定します。応募者のスキルや適性をチェックすることを目的としているため、基本的に企業主導で進めることになるでしょう。

一方、カジュアル面談は「親交を深めるための情報交換」を目的としており、合否を判断するものではありません。企業と求職者がお互いを理解し合う場となっているため、フラットな立場で意見交換ができます。採用面接と違って、企業が求職者に対してアピールする機会が多いのも特徴的です。

また、服装や持ち物にも違いがあります。面接はスーツでの参加が基本ですが、カジュアル面談はラフな格好での参加を推奨しているケースが多いです。また、求職者を判断する場ではないため、履歴書や職務履歴書を用意してもらう必要もありません。

カジュアル面談を実施する2つのメリット

カジュアル面談を実施するメリットとして、以下の2点が挙げられます。

カジュアル面談を実施するメリット

①選考辞退や採用ミスマッチを防げる

②多くの人材と接点を持てる

詳しく見ていきましょう。

①選考辞退や採用ミスマッチを防げる

1つ目のメリットは、選考辞退や採用ミスマッチの発生リスクを軽減できることです。

一般的な採用活動は初対面の状態で面接に臨むため、お互いの理解を深めるところから始めなければなりません。企業側は質疑応答で理解を深められますが、求職者側は転職サイトや企業ホームページから得られる情報がメイン。面接中に認識のズレを埋められれば問題ありませんが、求職者が合否のかかる場面で知りたい情報を全て聞き出すことは容易ではないでしょう。

仮に、お互いの認識にズレが招じたまま選考が進んでしまうと、応募当初とのイメージにギャップが生まれてしまい、選考辞退や早期退職のリスクが高くなってしまいます。

その点、カジュアル面談は合否に影響しないため、リラックスした雰囲気で対話できます。お互いが本音に近い状態で話し合えるため、その後の選考辞退や採用ミスマッチのリスクを軽減できるでしょう。

②多くの人材と接点を持てる

2つ目のメリットは、多くの人材と直接コミュニケーションが取れる点です。

本選考は転職意欲の高い求職者からの応募が大半ですが、カジュアル面談は本選考よりもハードルが低いため、応募が集まりやすくなります。優秀な人材が眠っている転職顕在層と出会えるチャンスも増えるため、今後の人脈を構築する目的で実施するのもおすすめです。

カジュアル面談の流れ

ここからは、カジュアル面談の基本的な流れを解説していきます。もちろん、これが正解というわけではないので、進行方法に悩んでいる方は、以下の順序を参考に自社に合ったやり方を探してみてください。

カジュアル面談の基本的な流れ

Step1.自己紹介

Step2.ヒアリング

Step3.企業説明

Step4.質問タイム

Step5.選考の案内

では、1つずつ解説していきます。

Step1.自己紹介

まずは、お互いの自己紹介から始めましょう。

面接のような張り詰めた空気の中では自然体で臨めないため、最初に求職者の緊張を和らげることが重要です。名前や部署名だけでなく、雑談も交えながら会話を広げていき、発言しやすい雰囲気をつくっていきましょう。

また、ここで「選考に関係のない面談」であることを再確認することも忘れてはいけません。求職者の中には、カジュアル面談に対して疑念や不安を抱いている方もいます。「本当は選考の一部なのでは?」と警戒されてしまうと相手が気軽に意見できなくなってしまうため、求職者の不安を払拭するような一言を添えてから本題に入るようにしましょう。

Step2.ヒアリング

自己紹介が終わったら、簡単なヒアリングに移りましょう。

カジュアル面談を有意義な時間にするためには、求職者のニーズを的確に把握することも大切です。「カジュアル面談に参加した理由」や「転職活動を始めたきっかけ」、「興味・関心のある業界」、「自社に対するイメージ」といったような質問から相手の状況や価値観を確認し、伝えるべき情報を整理していきましょう。

Step3.企業説明

ひと通り聞き終えたら、ヒアリング内容をもとに企業説明をしていきます。

マニュアル通りに説明するのではなく、相手の志望度を高められるような流れで話を展開できるとベストです。事業内容、業務内容、待遇、福利厚生のうちどの情報が最も効果的なのか、相手の反応を見ながら話題を組み立てていきましょう。

また、説明が一方通行にならないような工夫も必要です。定期的に質問タイムを挟むなど、相互コミュニケーションが取りやすい状況を作っておくとよいでしょう。

Step4.質問タイム

企業説明後に、質問の時間を設けましょう。

人によっては質問を遠慮してしまう可能性もあるため、求職者が聞きづらい事柄(労働環境や職場の雰囲気など)については、企業側から発信してもよいかもしれません。

また、このタイミングでオフィス内を案内するのもおすすめです。職場の雰囲気を実際に確認する機会を設けることで、印象に残りやすくなるでしょう。

Step5.選考の案内

最後は、選考の案内で締めくくりましょう。

面談から時間がたってしまうと応募意欲が薄れてしまうため、なるべく当日中に案内することを推奨します。ただし、その場で結論を迫ってしまうのはNGです。あくまで「案内」というスタンスは崩さないようにしましょう。

カジュアル面談を成功させる3つのコツ

カジュアル面談のゴールは、「企業理解を深めた上で選考に応募してもらうこと」です。

そこで最後に、カジュアル面談を成功させるコツをお伝えします。

カジュアル面談を成功させるコツ

①選考のような雰囲気を出さない

②情報を提供する

③現場の社員にも参加してもらう

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①選考のような雰囲気を出さない

カジュアル面談で最も重視すべきポイントは「雰囲気づくり」です。

リラックスした雰囲気であれば本音に近い意見を引き出せますが、緊張感の漂う雰囲気では建前上の意見や回答しか得られません。特に「志望動機」や「自己PR」といった面接の定番質問をしてしまうと、相手に警戒心を抱かれてしまうため要注意です。

「面談」と言いながら「面接」の雰囲気を出してしまうと相手に悪印象を与えてしまう可能性も高いため、リラックスできるような雰囲気づくりを念頭に置いて面談を進めるようにしましょう。

②情報を提供する

カジュアル面談は、求職者と企業がお互いの理解を深めるために、情報を交換する場です。面接のように求職者の話を聞き出すだけでは双方にとってプラスにならないため、企業側からも自発的に情報を提供するようにしましょう。

また、企業理解をより深めてもらうために、あらかじめ資料を渡しておくのもおすすめです。

③現場の社員にも参加してもらう

採用ミスマッチを防ぐためには、入社前に現場のリアルな意見を伝えることも大切です。入社後のギャップを生まないためにも、メリットとデメリットを両方共有しておきましょう。

可能であれば、現場で働く社員の口から伝えてもらうのがおすすめです。特に専門性の高い職種の場合は、経験者でないとわからない不安や悩みを抱えているケースが多いため、現場の社員に同席してもらうことで、よりリアルな情報を提供できるでしょう。

まとめ

今回は、カジュアル面談の導入メリットや基本的な進め方、成功させるコツについて解説してきました。

面接よりもフランクな雰囲気で対話できるカジュアル面談は、内定辞退や採用ミスマッチを防ぐための手段として効果的です。また、転職潜在層に対して直接アプローチできる絶好の機会にもなります。面談時には転職を考えていなくても、将来的に転職活動を再開した際に候補の1つとして検討してもらえるかもしれません。

求職者と良好な関係を構築するためにも、ぜひこの機会にカジュアル面談の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

ブログ

お役立ち情報 一覧

人事業務における「コンピテンシー」とは?評価項目やモデル設定の方法を紹介

人事業務における「コンピテンシー」とは?評価項目やモデル設定の方法を紹介

人材採用や査定の場面をはじめ、人事においては「多様な人材をどのように評価するか」が重要になります。明確な基準にもとづく適正な評価は、従業員のパフォーマンスの指針となり、経営を長きにわたって安定させるための鍵になるでしょう。

しかし、評価基準を定めるにあたり、多面的な観点を整理することは簡単ではありません。スキルや経験、業績など、可視化されやすいポイントのほか、課題解決への取り組み方や、物事の捉え方など、客観的に評価することが難しい観点も多いです。評価が主観的になったり、基準に偏りがあったりすれば、自社にマッチしない人材に高い評価を与えることにもなりかねません。

総合的な観点から評価システムを設計するうえで、武器になるのが「コンピテンシー」という考え方です。高い業績を上げている人物の「行動特性」を評価基準に落とし込むことで、実情に合った指針を得やすくなるでしょう。

この記事では、コンピテンシーの概要をふまえ、活用できる場面や、評価における項目例を紹介していきます。

コンピテンシーとは

コンピテンシー(competency)とは、英語で「資質」や「能力」といった意味を持つ言葉です。とくにビジネスシーンにおいては、「業務において高いパフォーマンスを発揮する人の行動特性」を指す言葉として用いられます。

高い業績を残すなど、会社にとって望ましい働きを見せている従業員をモデルにすることで、「実際にどのような要素がパフォーマンスにつながるのか」が見定めやすくなります。多くの場合、現実に表れている結果をもとに指標を作るため、現場の実情と乖離が生じにくい点がメリットです。

実際に、「指標としてどのような項目を盛り込むか」は会社の状況やモデルになる従業員の特性によって異なります。スキルや能力のほか、価値観や思考様式、動機づけの方法など、可視化されにくいポイントも含んだ総合指標として、採用や人事評価、人材開発といった場面で有効に活用できるでしょう。

コンピテンシーのモデル設定

一般的に、客観的なコンピテンシーの指標を作るには、自社にとって望ましい働きをする従業員をモデルに、その特性を多角的な観点から分析することが必要になります。

もちろん、現に在籍している従業員だけでは指標作成の材料として十分ではないケースもあるでしょう。そのような場合には、現実の人物をモデルとする方法だけではなく、自社業務において求められる要素を分析し、仮想的なモデルを設計する方法が用いられることもあります。実際の状況に応じたモデル設定が、コンピテンシーの指標を作る際のポイントです。

実在モデル

もっともスタンダードな方法は、自社で高いパフォーマンスを上げている人物をモデルに、コンピテンシーを設計するやり方です。

実際に業績を出している従業員を分析するため、設計した指標が机上の空論に陥りにくい点がメリットです。一方で、現実の人物に指標が左右されるため、「現状では気づかれていない重要なポイント」を見落とす可能性もあるでしょう。

また、人物の特性を指標に落とし込むプロセスは決して簡単ではありません。「その人の何がパフォーマンスにつながっているか」を正確に見通し、「どうすればその要素を適切に評価できるか」について抜け目なく検討していくことが要求されます。

多角的な観点を取り入れるうえで、複数の人物をモデルとすることも有効でしょう。業務や職務ごとになるべく細かく、求められる要素をピックアップすることが大切です。

理想モデル

実際の従業員だけで多角的な指標を作成できない場合には、実在しないモデルを用いて検討していく必要があります。業務内容から、求められる資質や能力、マインドセットなどを分析し、自社にとっての「理想的人材」をモデルとして構築していきましょう。

この方法のメリットは、現実の従業員の特性を事細かに分析する必要がないために、指標の設計がスムーズにいきやすい点です。一方で、実在の人物に則して設計されていないため、「ハードルを上げすぎて現実の状況と乖離してしまう」という事態に陥る可能性もあります。

指標としてうまく機能させるには、業務遂行に必要なポイントを絞り込みながら、基準としての精度を高めていく必要があります。項目に被りや漏れがないかをチェックしつつ、それぞれの項目の解像度を高めていきましょう。

ハイブリッドモデル

ハイブリッドモデルは、実在モデルと理想モデルの両者を混在させた方法です。実在の人物をモデルとしながら、「その人には備わっていないけれども、業務上重要だと思われるポイント」を補っていく形で用いられます。

実在の人物だけを参照していると、やはり指標に偏りが生じる可能性もあります。一方、完全に仮想的なモデルをもとに作成した指標は、「実際の結果」が見通せません。両者の手薄なポイントを補いつつ、「多角的」かつ「現実的」な指標を作るうえで、ハイブリッドモデルを採用する意義は大きいでしょう。

コンピテンシーを活用できる場面

コンピテンシーによる評価は、人事のさまざまな場面で有効に活用することができます。以下では、実際に多くの企業がコンピテンシー評価を取り入れている場面を紹介します。

人事評価

人事評価にコンピテンシーの観点を取り入れるメリットは、従業員の「行動の過程」を評価の対象にしやすくなる点にあります。数字ばかりではなく、「仕事への取り組み方」といったポイントも客観的に評価できるため、従業員の納得感にもつながりやすいのです。

評価に対する従業員の不満が募りやすいポイントとしては、「基準の不明瞭さ」が挙げられます。とくに人事担当者のごく一部のみが評価を担っている場合、「好き嫌いで評価を変えているのでは」など、主観性に対する疑念が生じる可能性もあるでしょう。

一方で、業績ベースの能力評価も、従業員の意識を結果や数字に偏重させてしまうおそれがあります。視点が短期的になったり、職場の雰囲気がピリピリしたりと、安定した労働環境を作るうえでは好ましくない状況に陥るケースも珍しくありません。

「行動特性」に焦点を当てたコンピテンシー評価は、「行動が結果に結びつく過程」を評価対象にするために、現場の感覚とも乖離が少なく、「可視化されにくいが業務において本質的なポイント」も評価しやすいメリットがあります。

ただし、評価システムの設計が複雑になりやすく、また1人のモデルでは観点が偏りやすい点には注意が必要です。評価の公平性を担保するために、複数のモデルから総合的にコンピテンシーを分析し、多くの項目に落とし込むことが求められます。

人材採用

採用の場面においても、コンピテンシーによる評価を導入することで、自社で活躍しうる人材を見極めやすくなるでしょう。可視化されにくい「考え方」や「価値観」といったポイントも評価の対象にできるため、自社とのマッチングを総合的に判断することが可能です。

評価基準を入念に設計し、事前にしっかりと共有しておくことで、面接官が異なる場合にも評価のばらつきを抑えられるようになります。基準を設計する際には、業種や職種ごとにパフォーマンスの高い従業員を複数選定し、それぞれの分野で求められる要素を整理していくとよいでしょう。

「何を評価の対象とするか」はもちろんですが、「面接時の回答をどう評価するか」を明確にすることも重要です。用意した質問を事前にさまざまな従業員に答えてもらい、パフォーマンスの高い社員にはどのような特徴があるかなど、時間をかけて検証しておく必要があります。

人材開発

研修や訓練などの人材開発の場面でも、コンピテンシーの観点は有効です。現に自社にいる従業員のパフォーマンス向上を図る際、具体的なモデルがあることで、社員教育の方向性を明確にできるでしょう。

仮に、模範社員が自社に在籍していたとしても、漠然と「あの人のようになってほしい」と考えているだけでは、他の従業員の指針とすることはできません。模範社員の行動特性を分解し、客観的に整理した基準を提示することで、「課題解決にはこういう思考のステップを踏めばいい」といった指針を共有できるでしょう。

コンピテンシーの項目例

コンピテンシーの評価軸として、どのような項目を取り入れるかは企業によって異なります。自社の環境や、モデルとなる従業員の特性から、必要な項目を設定していく作業が必要です。

以下ではコンピテンシー評価において採用される項目の例として、ハーバード大学が公開している「Competency Dictionary」から、いくつかの項目を抜粋して紹介します。

なお、評価システムを設計する際には、それぞれの項目に対して「どの程度該当するか」を段階的に評価する形を取るのが一般的です。たとえば5段階評価の形で、具体的な到達基準をレベル別に設定する、といった方法が多く取り入れられています。

(以下参照:“Harvard University Competency Dictionary”)

課題解決に関する項目

目の前の課題に対してどのように取り組み、どのような解決のステップを導き出していくか、というポイントに関する項目です。

課題分析と課題解決

論理的な思考によって問題の原因を特定し、適切な現状分析を通じて具体的な解決策を導出する力です。複数の解決策を準備しつつ、組織にとって最良の方法を多角的に検討することが求められます。

戦略的思考

長期的な目標を達成するにあたり、関連性の高い問題を特定し、論理的な推察にもとづくプランを段階的に設定しながら、継続的に取り組むことができる力を指しています。課題解決までの見通しの立て方や、戦略の設計・評価の適切さ、実行に移す能力などが評価の対象になるでしょう。

イノベーション

課題解決にあたり、革新的な方法を取り入れていく態度を指す項目です。さまざまな情報源から着想を得て、通例とは異なる観点を柔軟に受け入れ、これまで実践されていない方法を試し、その効果を適切に評価するという一連のプロセスが求められます。

チームビルディングに関する項目

組織の一員として、他の従業員と協働しながら、共通の目標を達成していく際に求められる要素です。

コミュニケーション能力

他者が必要としている情報を適切に伝え、また他者の考えを正確に読み取る力を意味します。口頭やテキスト、プレゼンテーションなど媒体や場面に合わせた方法を通じ、自分の思考やアイディアを表現しつつ、他者の主張にも耳を傾け、望ましい方向へと議論を導いていく態度が求められます。

視点と価値観

組織の理念や方針を適切に理解し、それをメンバーと共有しながら、チームの意思決定や個々の行動の前提に置く態度です。組織の理念を日々の行動に落とし込む理解力や、チームの方針に沿って活躍しているメンバーを認める視野の広さが必要になるでしょう。

多様性の評価

チームのメンバーそれぞれの能力や考え方、着眼点などを認め、適切に評価する態度を意味します。自分とは異なる特性を持つ他者のことを受け入れ、相互のパフォーマンスを高めていける関係構築の力も、評価の対象になるでしょう。

マインドセットに関する項目

長期的なビジョンを持って働き、成長を続けていくうえで必要となる要素です。

継続的な学び

新しい知識やスキルを学べる場面に積極的に関わり、学んだ内容を現実に応用しようとする態度です。学びの必要性をその都度明確にしながら、質問やメモ、フィードバックなどを通じて学びを最大化する意識の高さも求められます。

優秀さの追求

自身や他者を評価する際に、高いパフォーマンスを基準にする態度を指しています。とくに「自分に対する要求の高さ」として表れることが多く、自分自身の内的なルールとして、業務の量や質などについて明確な基準を据える傾向があります。

意思決定

課題やチャンスを正確に捉え、異なる情報源からのデータを比較検討しながら、結論を導き出す力です。さまざまな可能性が予想されるなか、その時々における状況の変化を見極めつつ、望ましい結果につながる行動を適切に選ぶ力でもあります。

まとめ

コンピテンシーによる評価は、実際に成果を出している従業員の行動特性をベースにしているため、現実との乖離が起きにくいことが特徴です。適切に評価システムを設計できれば、「自社にマッチした人材」を客観的な指標として表すことができ、評価に明確な軸が据えられるでしょう。

コンピテンシー評価は採用や人事評価、人材開発において強力なツールとなる半面、評価システムの設計に多くのリソースが必要になるケースも少なくありません。モデルとなる従業員の選定や、インタビューなどを通じた情報収集、パフォーマンスにつながる要素の特定、その要素を正確に評価するための制度構築というように、多くのプロセスが要求されます。さらに、設計段階で「観点の漏れ」があれば、評価軸として機能しなくなるおそれもあるでしょう。

設計には時間をかけて、なるべく多くの人物の観点を取り入れながら、重要なポイントを精査していくことが大切です。評価制度のアウトソーシングも選択肢ですが、その際にもしっかりと、「パフォーマンスを左右する要素」や「その要素をどう評価するか」を理解しておく必要があります。

ブログ

お役立ち情報 一覧

就業規則とは?変更するときの届出の記入例や注意点について

就業規則とは?変更するときの届出の記入例や注意点について

規則職場環境

労働条件や職場のルールを定める「就業規則」は、法令遵守の観点からはもちろん、職場の規律を整えたり、待遇の基準を明示したりと、労使双方にとって非常に重要な役割を担います。

「働くうえでのルール」は職場環境だけでなく、個人の働き方や生活のありようにも関わるため、就業規則の変更は慎重に行う必要があります。しかしもちろん、法改正や環境の変化などにともない、規則を変えなければならないケースもあるでしょう。

とくに近年では、働き方改革を通じた変化のなかで、「副業」や「テレワーク」など多様な勤務形態に対応する必要性も増しています。この記事では、就業規則の意義をふまえたうえで、規則を変更する際の届出や、手続き上の注意点について解説していきます。

就業規則とは

ルール

就業規則とは、賃金や労働時間をはじめとする労働条件や、事業所の服務を定めるルールのことです。労使間の契約に関わるルールにはさまざまなものがありますが、就業規則には「働くうえでの会社内の決まりごと」をもっとも具体的な形で定める役割があります。

就業規則がなければ、昇給や有給休暇の取得など多くの場面で「参照すべき根拠」がなくなってしまうでしょう。たとえば無断欠勤を長く続けている従業員を解雇する際にも、規則に照らした対応ができず、スムーズな対処が困難になると考えられます。

待遇の基準を明確にしたり、解雇事由を定めたりすることで、さまざまなケースにおいて書面の規定にもとづく措置を遂行できるようになるのです。

規則を取り決めるのは「使用者」であり、「常時10人以上の従業員を使用する使用者」には、「就業規則の作成」及び「労働基準監督署への届出」が義務づけられています。なお、従業員が10人未満の場合であっても、届出そのものは可能です。労使間トラブルを防止する観点から、法的義務を負わない場合にも、就業規則の作成及び届出が推奨されています。

就業規則は使用者が作成する「会社内のルール」ですが、労働関係の法令に反する内容を記載することはできません。労働基準法をはじめとする法令や、労使間の合意にもとづく「労使協定」あるいは「労働協約」に定められた内容の範囲内で、労働者を使用する際の取り決めを明示する必要があります。

就業規則に定めるべき事項

法律上、就業規則には「必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)」と、「規定を設ける場合には記載しなければいけない事項(相対的必要記載事項)」が定められています。労働基準法第89条は、就業規則に次の事項について定めるよう規定しています。

絶対的必要記載事項

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換(交代制の場合)に関する事項
  2. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

相対的必要記載事項

  1. 退職手当の適用範囲、決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  2. 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品その他の負担に関する事項
  4. 安全及び衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰、制裁に関する事項
  8. その他全労働者に適用される事項

就業規則の変更は可能?

就業規則の変更を行う場合には、その内容について、労働者を代表する者の意見を聴取し、労働基準局に変更の届出を行うことで、法律上必要な手続きを済ませることができます。

変更が生じるケースとしては、経営状況の変化にともなう賃金体系や勤務体系の変更、福利厚生の充実を図るための休業規定の変更、法改正への対応など、さまざまな場面が考えられるでしょう。

長期にわたって就業規則を変更していない場合などは、現在の状況に即して労働環境を整備するためにも、現状の規則を見直した方がよいケースがあるかもしれません。

「不利益変更」は原則不可だが例外もあり

就業規則は労働条件を直接左右するものですから、どのような変更でも認められるわけではありません。労働契約法の第9条においては、労働者の不利益になるような就業規則の変更が禁じられています。基本給の引き下げや、労働時間の延長、その他「みなし労働時間制」の導入など、労働条件の悪化につながりうる変更は原則として認められません。

ただし、次の第10条においては、不利益変更が容認されうる例外規定が設けられています。端的にいえば、「変更内容について労働者に事前に周知」することと、「変更内容が状況に照らして合理的であること」の2点を満たすことにより、例外として不利益変更が法的に許容されるのです。

つまり不利益変更を行う場合には、客観的に正当性のある理由にもとづき、労働者側の理解を得ながら進めていく必要がある、ということになります。たとえば「経営状況が○○%悪化し、今後○○年間は改善の見通しが立たないので、給与を○○%引き下げたい」という因果関係を明示し、従業員の納得を得るプロセスが要求されるでしょう。

就業規則を変更する際の手続きと届出

手続き

就業規則を変更する際には、労働基準法の第89条及び第90条に定められる方法により、労働基準監督署への届出を行う必要があります。 以下では具体的に、手続きのステップごとに要点を解説していきます。

変更点の検討と法制面の検証

就業規則を変更する目的に照らして、変更箇所と内容を検討していきます。その際、変更後の内容が法令に準じたものになっているか、また労使協定・労働協約に反していないかを確認しておきましょう。

社内への周知(不利益変更の場合)

賃金や労働時間、その他福利厚生などの労働条件において、労働者への不利益となる変更がある場合には、事前に周知しておく必要があります。手続きのためには「労働者全員の合意」は必要なく、後述の「過半数代表者」による意見書を提出することで、法律上の条件を満たすことができます。

しかし、不利益変更は後々のトラブルにもつながりやすく、周知や合意形成のプロセスに問題があった場合、訴訟に発展し不利益分の補償を命じられるケースもあります。労働者からの信頼や、業務におけるモチベーションにも影響が出るおそれがあるため、ただ周知するだけではなく、変更の必然性を真摯に説明し、理解を得られるよう努めておくとよいでしょう。

労働者の「過半数代表者」による「意見書」の作成

就業規則は労働条件を直接定めるものですから、変更する際には労働者側の理解を得ておく必要があります。意見を聴取した記録として、労働者代表の手で「意見書」を作成してもらい、労働基準監督署に提出しましょう。

事業場に労働者の過半数によって組織されている労働組合(過半数労働組合)がある場合には、その労働組合から変更内容についての意見を提出してもらう必要があります。

該当する労働組合がない場合には、まず労働者の過半数の意見を代表する「過半数代表者」を選出することになります。この際、代表者を使用者側から指名することはできません。管理監督者の立場にない労働者のうちから、挙手や話し合い、投票などの民主的な方法によって選出し、変更内容について意見を提出してもらいましょう。

過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見を書面にまとめ、日付と署名捺印を入れたうえで、「意見書」として以下の「就業規則変更届」とともに労働基準監督署に提出します。

なお、パートタイムに関する就業規則など、一部の労働者にのみ関係する変更であっても、事業所の全労働者のうち過半数を代表する者の意見を聴取する必要があります。

就業規則変更届の作成

変更内容が定まったら、労働基準監督署に提出する変更届を作成します。形式の指定はありませんが、変更箇所を対照できる形にしておくと、整理する際や社内に周知する際にもスムーズです。

厚生労働省のサイト上に、就業規則変更届のフォーマットが用意されているので、これを利用するのもよいでしょう。変更届に添付する「意見書」のフォーマットも付属しているため、併せて提出書類を揃えることができます。

就業規則変更届の記入例

前述のように、変更届には形式の指定がありませんので、変更前の文言と変更後の文言がわかる形であれば、問題なく受理されるでしょう。

ここでは厚生労働省の「モデル就業規則」に副業規定が導入されたケースを例にとり、変更前後の記入例を掲載します。

(参照・引用:厚生労働省「モデル就業規則について」

副業禁止規定を撤廃する際の記入例

副業禁止規定を撤廃する際の記入例

副業規定を新設する際の記入例

副業規定を新設する際の記入例

労働基準監督署への届出

作成した「就業規則変更届」と、過半数代表者による「意見書」を、管轄地域の労働基準監督署に提出します。提出は窓口のほか、郵送や「e-Gov」による電子申請も可能です。

就業規則を変更したにもかかわらず、届出を行わなかった場合には、労働基準法第120条の罰則規定により30万円以下の罰金が科せられます。明確な期限は定められていませんが、作成から「遅滞なく」届出を行うよう定められているため、早めの提出が望ましいでしょう。

変更決定後の社内周知

就業規則変更届が受領されたら、社内への周知を行いましょう。

労働基準法第106条においては、常時「見やすい場所へ掲示」したり、書面を交付したりするなどして、すべての従業員が確認できる方法で掲示や告知を行うよう定められています。全員が常時確認できる方法であれば、共有ファイルなどの電子的な方法でも問題ありません。

なお、変更内容が一部の従業員にしか関係しないものであっても、全員の目に触れるようにしておく必要がありますので注意しましょう。

就業規則を変更する際の注意点

ポイント

就業規則の変更は、法律的な手続きであるとともに、労使間の関係性にも大きく関わる手続きです。届出に不備がないようにすることはもちろん、労働者側の理解や納得感も大切にしながらステップを進めていきましょう。

変更の届出は「事業所」ごとに行う

就業規則の適用範囲は「事業所」であるため、同じ会社であっても事業所ごとに労働基準監督署への届出を行う必要があります。「過半数代表者」の選出及び意見聴取も、事業所を単位として進めなくてはいけません。

すべての事業所でまったく同じ就業規則を用いており、変更内容も同じ場合には、本社からの一括申請も可能です。ただしその場合にも、「意見書」はそれぞれの事業所で作成する必要がありますので注意しましょう。

合意形成のプロセスを丁寧に

就業規則の変更は、労働条件を直接左右するため、従業員の生活にも大きな変化をもたらす可能性があります。不利益変更がある場合にはもちろん、一概に不利益とならないような変更であっても、事前の周知と説明を徹底しておくことがトラブル防止につながります。

なるべく届出を行う前に、就業規則に変更を行う旨と、変更内容に加え、「なぜそれが必要なのか」を従業員に開示しておくとよいでしょう。

とくに不利益変更が含まれる場合には、合意形成のプロセスには慎重さが必要です。判例では、「従業員が不利益変更に異議を述べなかったこと」を「同意」とは認めない判断が下されたケース(協愛事件(大阪高判平22.3.18 労判1015-83))もあり、明確な形で「同意があった事実」を記録しておくことが望ましいといえます。

なお、同意の有無は「不利益の内容・程度、同意に至るまでの経緯・態様、同意を得る前に使用者が十分な情報提供と説明を行っているか」などによって多角的に判断すべきものとされています。たとえば労働者側が断れないような状況で、一方的な説明のみで同意書にサインさせる、といった方法は認められません。

法的に有効な合意形成のためには、「全体に周知して代表者の意見を聞く」だけでなく、可能な限り従業員への面談などを通じて事情を説明し、個々の意見を聴取しておくことが望ましいでしょう。その際、使用者側が説明した内容や、従業員側の意見を記録しながら、同意書に署名してもらうといった方法が考えられます。

(参照:労働政策研究・研修機構(JILPT)「(74)【労働条件の変更】就業規則による労働条件の変更」

まとめ

労働契約は労使間の合意にもとづいて成り立つものですから、契約内容を形にした「就業規則」は「双方が納得したルール」として運用される必要があります。

職場環境や待遇を改善したり、法令の改正に適合させたりと、就業規則の変更が必要になるケースはさまざまに考えられます。どのような場合でも、なるべく事前に従業員に変更の内容を伝え、理解を得ておくことがトラブル防止につながるでしょう。

とくに不利益をともなう変更の際には、合意形成を丁寧に進めていくことが大切です。前述のとおり労働契約法第10条によると、その変更が合理的なものであり、事前に労働者に周知されている場合には、使用者は労働者の同意がなくても就業規則を変更することができることになりますが、労使間の信頼関係を保つためにも従業員の心情面も汲み取りながら、変更の具体的内容や、それが必要である客観的な理由を開示し、納得のいく説明を心がけしましょう。

ブログ

お役立ち情報 一覧

注目:外国人技能実習生を採用のメリット

注目】外国人技能実習生を採用のメリット

 

チョー

こんにちは、こちらの記事では海外人材の今について書いています。

是非、気になる方は一読お願いします!

コロナ禍の移動制限下では、やはり国内に在留中の外国人に対して採用活動を進める傾向と、緩和されている一部の国からの採用が主な外国人材採用の傾向となっています。
2020年末時点、法務省公表の在留外国人数(在留資格別)によりますと、技能実習生378,200人で、永住者に次いで2番目に多い在留資格者となり、就労ビザの中では一番多い数値となっています。
現在、日本で技能実習生として活動している外国人の履歴と今後の動きに合わせて、企業にマッチングした実習生を求人することが、ポイントとなり、優良な監理団体と送り出し機関との連携が大きなメリットを生み出すでしょう。


日本人社員に変わる外国人社員採用のメリット

売り手市場の今、日本人社員の採用が難しくなっている中、外国人人材に視点を合わせて採用を検討している企業が増加しています。
グローバル戦略の一環として2020年までに外国人留学生を30万人増やす計画から、発展途上国のための国際貢献として海外から技実習生を受け入れている技能実習制度、そして、2019年よりスタートした新しい制度、特定技能などは、少子高齢化に伴う企業の人手不足を解消するためや、日本のグローバル化を目指した日本政府が示す外国人受け入れの一連の流れとなります。
これらの制度を活用して来日している在留外国人数は、ほぼ右肩上がりに増加傾向にあり、企業が求める人材の条件に、日本人社員枠に変わる外国人社員の動向が見られます。
外国人社員の採用に関しては、海外からの採用フローに時間を要するという点がありますが、日本人社員を採用するまでのコストや教育の手間を考えると、例えば外国人技能実習生を採用する場合に優秀な監理団体のサポートで人材確保に繋がれば、採用のためのリスクは最小限に抑えることも可能となります。

外国人技能実習生のモチベーションと職場環境向上のメリット

モチベーション高く来日している外国人技能実習生を受け入れる企業では、現社員にも良い影響を与え、職場環境の活性化や生産性の向上などに繋がる傾向にあります。
技能実習制度は、母国への国際貢献として実習生は働きながら日本の技術を学ぶという目的となっていますが、事実上は、実習生の目的と受け入れ企業の目的がミスマッチになっているケースも見られ、技能実習生のモチベーション低下に繋がるような状況も起きています。このような状況下においても、本来の技能実習制度の目的や制度の理解を得て来日し、やる気を持って真面目に対応できている技能実習生もいます。
やる気のある技能実習生のマネジメントの質を上げることや、また実習生から得た活力を日本人社員の意識の向上に繋げること等、技能実習生を受け入れる企業に与えるメリットは広がります。

業務マニュアルの見直しから生まれるメリット

外国人技能実習生を受けれる企業では、日本人社員と共有できる業務マニュアルの改善が必要です。基本的には、言語による共通ルールは、まず始めに見直すことと、習慣やマナーの違いから理解できないルールについては、わかりやすいマニュアル化したルールも必要になってきます。外国人には身に付いていない日本式のルールを徹底し、反復しながらの社員教育を進めます。業務マニュアルの見直しは、現日本人社員にも、改めて業務内容を見直すきっかけにもなり、企業全体の業務の品質向上に繋がります。

海外進出への展開と国際貢献できる企業としてのメリット

外国人技能実習制度の活用は、国際貢献となる活動が企業イメージの向上に繋がり、自社で働く技能実習生との連携によって、将来的なグローバルビジネス拡大への足がかりとなります。技能実習生の母国への関心や実習生との円滑なコミュニケーションから、同じ現地からの外国人採用のためにマーケティングリサーチも可能となります。
技能実習生という個人からの事業展開は、企業のビジネスセンスによって広がりを増すことも可能となります。

監理団体はサポートしてくれるメリット

外国人技能実習制度は、日本の監理団体からのサポートを受けながら進めることができます。実習生の海外からの求人募集から、日本に入国するまでの研修や各種手続き等を請け負い、企業に受け入れ後も継続したサポートを受けられるメリットがあります。
受け入れ企業によっては、初めての外国人社員の雇用では、戸惑いやミスマッチが大きく影響することがあります。監理団体は技能実習生の職場での状況や生活面でのサポートを相談しながらフォローしてくれるので、受け入れ企業が単独で外国人技能実習生を教育したりサポートする負担が拡散することができます。

在留資格の変更も可能であるメリット

外国人技能実習生は他の在留資格へ変更することで、企業の雇用計画に合わせることも可能です。技能実習を修了後も継続して実習生を雇用したい場合には、特定技能に移行することができます。この場合の条件は、技能実習2号までを良好に修了するとと、技能実習の時の業種や作業内容が、特定技能1号の職種が同じであることが必要です。
技能実習生である外国人を、在留資格を移行することで長期雇用できるメリットがあります。

コロナ禍の外国人技能実習生採用のメリット

外国人労働者の受け入れを積極的に進めている日本政府の意向は、コロナ禍の移動制限によって停滞している現状です。現在、その改善策として、在留外国人からの雇用が一般的な流れとなっています。
在留外国人の中でも、技能実習修了者で帰国困難な外国人や、解雇された実習生などに、特例措置として在留資格の移行による緩和策が出ています。
この時期に、外国人採用を検討している企業または、技能実習生を雇用し今後の雇用計画を考えている企業にとっては、技能実習生から在留資格変更による雇用継続や、新たな採用計画が進めることができます。

 まとめ

外国人技能実習生を採用した場合のメリットについて解説いたしました。企業の条件にあった外国人が、どの在留資格であれば本人と企業にとってメリットがあるのかを考慮してよいよい採用活動を進めて行きましょう。

ブログ

お役立ち情報 一覧

特定技能のビザ申請は本当に大変か検証してみた

特定技能のビザ申請は本当に大変か検証してみた

author

川嶋万里 – 更新日:2222年3月31日

top-view

Connect Job WORKERSでは、在留資格「特定技能」で外国人雇用を考える皆様に役立つ情報を発信していきます。


Agenda
  • 1. まずは必要書類をチェック
  • 2. 「その他の書類」って何?
  • 3. まとめ
1.
  まずは必要書類をチェック

まずは、特定技能のビザ申請に必要な書類をチェックしていきましょう。
検索エンジンで「特定技能」等と検索すると出てくる法務省のページに、必要な書類のリストが掲載されていました。

今回の記事では、国内留学生からの切替を想定していますので、変更申請のページを確認してみます。
すると、必要書類としては、大きく6種類の書類が必要だという事が分かりました。

  • <必要書類リスト>
  •  ①在留資格変更許可申請書 一通
  •  ②写真(4cm×3cm)一葉
  •  ③申請人のパスポートと在留カード 提示
  •  ④その他の書類
  •  ⑤(複数人の申請をまとめて行う場合)申請人名
  •  ⑥(申請人本人でない者が申請する場合)身分を証明する書類

1つ1つを見ていくと、①~③、⑤⑥等は、他の申請でも一般的に求められる書類で、準備はそこまで大変なものではありません。

特定技能の申請が大変といわれる所以は「④その他の書類」にあります。

2.
  「その他の書類」って何?

恐る恐る「その他の書類」のリストを覗いてみると、11ページにわたって必要な書類がまとめられていました。14業種ごとに必要書類が異なる他、試験ルートか技能実習ルートか等によっても書類が変わり、その数はざっと40種類に及ぶ様です。

一見すると膨大な数の書類を準備・提出しなければならないように見えるので、これだけでクラクラしてきてしまいそうですね。。

(図)提出書類リストの一部。

本コラムのテーマ「特定技能のビザ申請は本当に大変なのか?」の検証はここからが本番です。

例えば介護業で就労をする場合(留学からの試験ルート)の必要書類について、より詳しく見ていきましょう。

必要書類を「自分で作成する書類」「取り寄せ/回収が必要な書類」の2種類に分けると、
以下の表の様にまとめる事ができます。

全業種で必要な共通書類(約20種※) 介護分野(試験ルート)で必要な書類(7種)
1自分で作成する書類

取り寄せ/回収が必要な書類

・変更許可申請書
・報酬に関する説明書
・雇用契約書 等(16種)

・受入企業の役員の住民票
・申請人の納税証明書
・国民健康保険証の写し
・源泉徴収票  等

・事業所の概要書
・受け入れに関する誓約書

・指定通知書の写し
・介護技能評価試験合格証明書の写し
・介護日本語評価試験の合格証明書の写し
・日本語能力試験N4または日本語基礎テストA2の合格証明書の写し

「その他の書類」のリストを初めに見たときには、11ページを前に愕然としてしまいそうでしたが、こうして必要な書類だけを整理してみると、やるべき事がすっきりと見えてきますね。

▼自分で作成する書類について

今回の場合、分野共通で必要な16種に加え、試験ルートで介護分野の場合+2種で、自分で作成が必要な書類は合計20種類程度。初めの印象よりグッと減ったので「思ったより少ないかも…」と感じてしまいそうな所ですが、更に追い風として、自力で作成する書類については、基本的に出入国在留管理庁が定めた様式(テンプレート)が存在します。

(図)様式の例(分野別様式1-1「介護分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」)

写真の例のように、出入国在留管理庁の様式には「自由記述」の欄はほとんどなく、基本的には内容をきちんと読んだ上で、企業担当者や外国人本人の署名で「空欄」を埋めていく様な形式になっています。

最も自由記述欄が多い「支援計画書」(参考様式第1-17号)をとって見ても、自由記述は支援担当者の住所や名前、登録支援機関への委託の有無、支援業務の実施方法(対面かオンラインか)等であり、空欄の数は多いものの、内容に悩んでしまう様な設問ではありません。

(図)参考様式第1-17号「1号特定技能外国人支援計画書」から抜粋。

「作成書類の様式が定まっている」という点においては、自由フォーマットで書類の提出を求められる事もある他の在留資格と比べると、特定技能の申請は書類の数は多い一方、記入時に迷いが少なくサクサクと作成・準備を進める事ができる為、作成の難易度は低いと言えると思います。

取り寄せ/回収が必要な書類について

特定技能の申請書類において手間がかかり大変なのは、恐らく自分で作成する書類ではなく、取り寄せや回収が必要な書類でしょう。

申請者の試験合格証明書(試験ルートの場合)や、源泉徴収票、納税証明書、受け入れ企業の役員の住民票等、取り寄せ先が異なる様々な書類を入手する必要があります。期日までに申請を完了させる為に、申請者にまつわる書類の回収だけでなく、御社内でも普段他では取り寄せない様な書類の手配も必要になる為、余裕を持って手配をする必要があるかと思います。

採用活用を進められている内に、あらかじめ最寄りの窓口を調べたり、候補者とのコミュニケーションの中で確認をする等、効率よく書類を入手するための準備しておくとよいかもしれません。

3.
  まとめ

今回は、「書類の準備が大変」と話題の特定技能のビザ申請について、どの部分に手間がかかりそうなのか、逆に実は手間がかからなさそうなのか、を整理してみました。

「その他の書類」リストを見た時には気持ちが滅入ってしまっていたけど、整理してみると少し気持ちが楽になった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

まだまだ煩雑な部分もある申請ではありますが、既に特定技能のビザ申請を何十件もこなされてきた企業からは「意外とシンプルで、慣れれば簡単ですよ!」という声もあります。取り寄せや回収が必要な書類集めを前持って効率的に行い、作成書類については地道に様式を埋めていくだけ、と実はシンプルな準備が故に、考え方次第では他より楽に申請を行うことができる在留資格と言えます。

初めて取り組まれるという方も、ぜひまずは、出入国在留管理庁のウェブサイトで申請書類リストや様式からチェックしてみてください!

参考:出入国在留管理庁「特定技能運用要領・各種様式等」
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00201.html.

ブログ

お役立ち情報 一覧

エンジニア採用が再びピンチ! 窮地を脱すべく改善施策の企画会議をしまし

エンジニア採用が再びピンチ! 窮地を脱すべく改善施策の企画会議をしまし

f:id:namerou_engineer:20210408093355p:plain

こんにちは!CTO の芹澤です。
突然ですが、SmartHR社では現在エンジニア採用の進捗が非常に悪く、本記事の執筆時点で目標達成率9.3%という状況です。いわゆる、ピンチです。
どうしてこんなことになってしまったのか…人事グループの方々とここ最近の採用関連の数値を分析したところ、採用の母集団形成がうまくいっておらず、特に「自己応募数」の減少が深刻なことがわかりました。
採用をオープンしているにも関わらず自己応募が減少している。多くの場合、これはエンジニアの採用ブランディングがうまくいっていないことが要因としてあげられます。

過去の施策とその功罪思い返せばこのエンジニアの採用ブランディングとは、長い付き合いになります。
2018年にも約半年間エンジニア採用ができず、真剣に採用ブランディングと向き合った時期がありました。チーム一丸で認知獲得施策を捻り出し、「エンジニア歓迎会の練習会」や「RubyKaigi での社長登壇」といった行動につなげたのです。おかげさまでこれらの施策を通して弊社を知り応募してくださる方が増え、「あの記事をみました!」と言っていただける機会が増えました。
いや、増えすぎてしまったのかもしれません。
私たちはこれらの功績に甘えてしまい、継続的に情報を発信することを怠ってしまっておりました。

いま、やるべきこと

2018年といえば、社員数も約50名と現在の約1/8であり、プロダクト開発の状況も全く異なります。当時発信していた内容は、いわばだいぶ陳腐化してしまっているのです。

 

社員数の推移
社員数の推移

 

時を経て約400名規模の組織になった今、私たちが何をどのように開発していて、なぜエンジニアを募集しているのかを、改めてお伝えしなければいけないと思い、初心に立ち返り、エンジニア採用ブランディングの再構築のための企画会議を実施しました。

企画会議に際して、情報発信のネタを社内に広く公募したところ、各部署よりなんと 170 を超える応募があり、企画会議ではそれらを選定したり、より深ぼっていくことをしました。

 

応募されたネタの一例
応募されたネタの一例

 

議論を進めていくと、「普段取り組んでいることをきちんとテックブログで発信する」という、ぐうの音も出ないほど当たり前のことが大切であることが改めてわかってきたり、社員の英知が結集された飛び道具系の面白ネタが生まれたりと、非常に多くの実りが得られました。

その中でも実施に値すると判断された案を厳選し、GitHub Project のカードでリストアップしたものがこちらになります。

f:id:namerou_engineer:20210407194848p:plain

github.com

そう、私たちはこれより情報発信を強化し、ここに起票されているような内容を随時提供して参ります。
プロダクトやチームの雰囲気やカルチャー、現状の課題や目指している姿などをありのままにお伝えし、安心して選考に進んでいただけるようなコンテンツにしていきますので、どうぞ楽しみにお待ちくださいませ!

メタな話

ちなみに、上記 GitHub Project を公開し、このブログを書いていること自体も、公募されたネタの1つが元になっていたりします。

f:id:namerou_engineer:20210407194914p:plain

せっかくなので、ボツになったネタもいくつか紹介して終わろうと思います。

「エヴァコラボ」

シンジくんにSmartHRに入社してもらう

流行り物ですからね、やりたくなりますよね。そのほか「エヴァ観たことない人が勘でシンエヴァの感想を言う会」などエヴァにかけたネタはありましたが、いずれもプロダクトやチームのことを知っていただくという本来の目的を果たせそうになかったので、ボツ。

「内定充足するまで止まらない地獄の無限アドベントカレンダー」

毎日内定承諾数を貼りながら目標に届くまで延々とアドベントカレンダーを書き続ける。書いてる時点でもう絶対にやりたくない。

クリスマスまでの日付を数えるというアドベントカレンダーの概念を覆す企画。なかなかにハードな採用目標を設定している都合上、1年間のほとんどの日でブログを書くことになりそうで、記事の数は担保されるように思いつつも、品質の担保や開発メンバーの負荷を考えるとあまりにも厳しいため、ボツ。

「海の Ruby 釣れるまでかえれま10」

エンジニア採用に関わるみんなで釣りに行き、海のルビーこと真鯛が釣れるまで帰れない様子を配信する

弊社のバックエンド開発言語が Ruby であることにかけた企画。内情をお伝えすると、弊社社長である宮田がここ最近釣りにどハマりしており、「マグロを一本釣りして振舞う」といった釣りに関連したネタが散見されました。その多くは社長自身の起案であり、ただただ釣りにいきたいだけっぽかったので、ボツ。

We are Hiring!

さて、これから情報発信を強化していく状況ではありますが、募集自体は現時点でも絶賛オープン中となっておりますので、本記事を読んでピンと来たかたがいらっしゃいましたら、是非以下のサイトよりご応募いただければと思います。
どうぞよろしくお願いします!

ブログ

お役立ち情報 一覧

「特定活動」の外国人は採用できる? 「特定技能1号」に変更する流れや書類などについて解説!

「特定活動」の外国人は採用できる? 「特定技能1号」に変更する流れや書類などについて解説!

 

外国人求職者を採用する際に、在留資格が「特定活動」の求職者が目に入るのではないでしょうか。特定活動の在留資格を持つ外国人は採用できるのか気になるところです。今回は特定活動の在留資格の意味や種類をおさらいしつつ、採用できるのかどうかを解説していきます。在留資格「特定技能1号」に変更する流れについても触れているので、あわせて参考にしてみてください。

在留資格「特定活動」とは?

はじめに、特定活動の意味や種類について解説していきます。

特定活動の意味

特定活動とは、既存の在留資格で認められていない特定の活動を行う外国人に与えられる在留資格です。

つまり、少数派に該当する活動を行う外国人であっても、特定活動の在留資格によって日本に滞在できる可能性があります。

出入国管理及び難民認定法では、特定活動に関して下記の通り規定されています。

在留資格 本邦において行うことができる活動
特定活動 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動

引用:出入国管理及び難民認定法(e-Govポータル)

具体的には下記の活動が挙げられます。

在留資格 概要
特定研究活動 高度な知識を持つ外国人を受け入れるための在留資格
特定情報処理活動 自然科学あるいは人文科学の技術・知識が必要な
情報処理業務を希望する外国人を受け入れるための在留資格
特定研究等家族滞在活動及び
特定情報処理家族滞在活動
上記2つの在留資格を持つ外国人に扶養されている
配偶者や子を受け入れるための在留資格

 

参考:特定活動5(出入国在留管理庁)

特定活動の種類

特定活動の種類は主に「告示特定活動」「告示外特定活動」に分けられます。それぞれの詳細を確認してみましょう。

種類1.告示特定活動

告示特定活動とは、法務大臣が告示した活動です。外交官家事使用人やアマチュアスポーツ選手、医療滞在同伴者など、さまざまな立場の活動が認められています。
ただし、時代の流れによって規定されるので、適宜削除されることがある点に注意が必要です。

種類2.告示外特定活動

告示外特定活動は、ここまで紹介した活動内容に当てはまらない活動です。法務大臣が外国人の事情を個別に考慮して活動を認めます。
具体的には、在留資格の延長・変更が認められなかった方や、難民申請を行っている方などが挙げられます。

「特定活動」は就労可能?

特定活動は外国人ごとに許可されている活動が異なるので、個別に就労の可否を見極める必要があります。
見極める際のポイントになるのが、外国人のパスポートに添付されている「指定書」という書類です。指定書には、滞在理由を判別できるよう、特定活動の内容が記載されています。
指定書の本文に「報酬を受ける活動を除く」と記載があれば、外国人は就労できません。
また、在留カードの表面に就労不可と記載がある場合も、雇用できないので注意してください。在留カードの記載については、下記の資料から確認できるので参考にしてみてください。

 

参考:届出事項の確認方法(厚生労働省)

在留資格「特定技能1号」とは?

特定技能1号とは、特定の産業分野において相当程度の知識あるいは経験を必要とする業務に携わる外国人向けの在留資格です。受入分野は介護やビルクリーニング、建設などを含む合計14分野となっています。

日本の労働人材不足を解決するための在留資格なので、必ずしも就労が認められない特定活動とは異なり、安心して雇用できるのが大きな特徴です。

近年、コロナ禍の影響を受けて解雇される技能実習生が現れたことから、技能実習生が特定活動の在留資格で国内に滞在できる制度がスタートしました。滞在中に専門分野の技術習得を続け、特定技能の在留資格を目指す流れになっています。

このように、特定活動の在留資格が特定技能に切り替える準備として活用されるケースもあります。したがって、特定活動の在留資格を持っていても就労できない場合、採用候補者の在留資格を特定技能1号に切り替えさせることも検討してみるとよいでしょう。

なお、特定技能1号の在留期間は通算で上限5年であり、家族の帯同は認められていません。また、技能や日本語に関する試験で能力を測定する必要もあります。受け入れに関する知識として把握しておきましょう。

 

参考:特定技能への在留資格変更で必要な書類や手続きについて

特定技能ガイドブック

 

「特定活動」から「特定技能1号」に変更して雇用するときの流れ

特定活動から特定技能1号の在留資格に変更して雇用するときの流れや用意すべき書類・資料について解説していきます。

ステップ1.特定技能1号に関する試験に合格する

一般的に技能実習2号を良好に終了している外国人であれば、特定技能1号の取得に必要とされる同分野の技能試験と日本語試験が免除になります。
しかし、特定活動から資格を変更する場合は、業務に必要な専門技術と日本語能力を試験の合格によって証明しなければなりません。

ステップ2.採用候補者と雇用契約を結ぶ

特定技能外国人として雇用したい人材と雇用契約を結びます。なお、雇用契約締結後には受入側による事前ガイダンスや健康診断なども必要です。

ステップ3.特定技能外国人の支援計画を策定する

特定技能外国人が安定的かつ円滑に活動できるよう、受入機関は日常生活・社会生活に関する支援計画を作成しなければなりません。

具体的な記載事項は、公的手続きの補助や苦情への対応、日本人との交流促進などに関する内容です。

ステップ4.在留資格変更許可を申請する

特定技能1号の試験に合格して雇用契約を締結したら、地方出入国在留管理局に対して在留資格変更許可を申請します。在留資格が変更され次第、就労がスタートできる流れです。

申請にあたって用意すべき書類・資料は下記の通りです。

【在留資格変更許可申請書】

地方出入国管理官署で用紙が用意されています。

【写真】

写真のサイズは縦4cm×3cmです。申請前から3か月以内に正面から撮影されたものに限ります。背景は無背景で鮮明でなければならず、帽子を着用してはいけません。

【申請人のパスポートおよび在留カード】

申請人以外が申請書類を提出する場合でも、申請人のパスポートおよび在留カードの提示は必要です。

【身分を証明できる文書】

申請人以外が申請書類を提出する場合に、申請を提出する資格がある方なのかを確認する書類です。申請取次者証明書や戸籍謄本などが該当します。

【特定技能の分野別に必要な書類】

特定技能の分野ごとに必要な書類もあります。たとえば介護分野では、「介護福祉士養成施設の卒業証明書の写し」や「介護技能評価試験の合格証明書の写し」「介護分野における業務を行わせる事業所の概要書」などが必要です。

参考:特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~(出入国在留管理庁)

在留資格変更許可申請「特定技能」(出入国在留管理庁)

 

介護分野に関する必要な書類(出入国在留管理庁)

 

まとめ

以上、特定活動の意味や種類をおさらいしつつ、特定活動の就労可否について解説しました。

特定活動の場合は、就労できないケースと就労できるケースがあり、指定書や在留カードを事前に確認する必要があるとおわかりいただけたでしょう。

もし特定活動で就労できない場合、特定技能1号の在留資格に切り替えることで、雇用できる場合もあります。

ただ、外国人が安心して活動に専念できるよう、支援計画を策定する必要もあります。いずれにせよ、特定活動や特定技能1号の外国人と雇用契約を結ぶ前には、外国人の生活をサポートできる環境を最低限整えておきましょう。