Category: 外国人総合ブログ

Googleも取り入れている構造化面接とは?心理学に基づいた質問例も提案

2022-05-12 01:31:02 1149 view
Googleも取り入れている構造化面接とは?心理学に基づいた質問例も提案 採用  2021.08.17 「採用ミスマッチの防止」は、あらゆる企業の人事担当にとって最重要課題の1つです。自社に適した人材を見つけるためには、「面接」において必要な情報を的確に引き出すことが求められます。 面接の際、担当者間で重視するポイントが違ったり、応募者ごとにまったく異なる質問をしていたりすると、面接内容の比較が難しくなるでしょう。結果として採用基準にブレが生じてしまえば、必然的に選考の精度は低下してしまいます。 採用の精度を保つためには、面接担当者や応募者が誰であっても再現可能な方法を用意することが有効です。近年、再現性を高めることに重きを置いた面接方法として、あらかじめ定めたテンプレートに従って面接を進める「構造化面接」という手法が注目されています。 この記事では、構造化面接の概要や、導入時の流れを解説したうえで、実際の面接に応用できる質問例を紹介していきます。 構造化面接とは 構造化面接(structured interview)とは、「あらかじめ形を定められた面接」のことを指しています。具体的には、どの回答者にも「同じ質問」を「同じ順序で」行う面接方法です。 もともとは臨床心理学におけるデータ集積の手法として定着したものであり、研究調査の現場で被験者の回答内容を定量的に分析・検証する目的で利用されています。 現在ではGoogleをはじめ、採用の場に構造化面接を取り入れる企業も見られるようになり、ビジネスにおける有効性が知られるようになりました。 もちろん、ただ「決まった質問をする」だけでは十分に効果を得ることはできません。採用要件に照らした適切な質問内容の選定や、回答に対する体系化された評価指標など、システムを整えることではじめて構造化面接の利点を引き出すことができるのです。 たとえばGoogleの採用面接においては、「すべての応募者に同じ質問をして、同じ尺度で回答を採点し、事前に決められた一貫した採用要件に基づいて採用を決定」するシステムが運用されています。 (参照・引用:Google re:Work「ガイド: 構造化面接を実施する」) つまり構造化面接の本質は、「面接のマニュアル化」というポイントにあるのではなく、「明確な基準に基づく採用過程の体系化」という点にあるといえるでしょう。要件に照らしながら、システマティックに質問内容や評価基準を設定していくことで、選考プロセスを合理化・効率化することがこの手法の本旨です。 構造化面接を導入している企業のうちには、面接を全面的に構造化している企業だけではなく、部分的に「非構造化面接」や「半構造化面接」の手法を取り入れる企業も存在します。以下では、この2つの面接方法についても簡単に紹介していきます。 非構造化面接とは 非構造化面接は、構造化面接と同様、もともとは臨床心理学分野で使われていた用語です。カウンセリングなど、回答者から自由な反応を引き出す目的で用いられ、話の軸を固定しないオープンな質問を特徴としています。 たとえば「○○についてどう思いますか?」など、大きなテーマだけを設定し、回答に応じて面接の流れを展開させていく形が一般的です。積極的な相づちや、相手の話を繰り返すことによって話しやすい空気を作りながら、掘り下げたいポイントについて質問を深めていきます。 質問者が回答者のことを理解することはもちろん、回答者が受け答えを通じて自身への「気づき」を得る、ということが趣旨とされていることも多いです。そのため実際に導入する際には、「明確な内容を聞き出す」というよりも、「着地点を決めずに、共感ベースで話を進めていく」という前提のもと、展開を組み立てることになるでしょう。 採用面接の手法としては、柔軟な展開により応募者の個性を引き出しやすいメリットがある一方で、流れが面接担当者の経験に依存しやすく、応募者との相性によって引き出せる内容が異なるといったリスクも存在します。 半構造化面接とは 「半構造化面接」とは、あらかじめ質問を用意しつつ、話の流れに応じて質問の内容や順序、ニュアンスを変化させていく面接方法です。 面接に一定の枠組みを持たせることで、その趣旨を見失わないようにしつつ、個々の回答者に合わせて質問を掘り下げていけるメリットがあります。 いくつか必須の質問を用意しつつ、流れに合わせて追加の質問を行うなど、多くの採用面接で取り入れられている手法です。 構造化面接のメリット 質問内容をマニュアル化することのメリットとして、まず思いつくのは「面接官の負担が減る」「時間を短縮できる」といったリソース面のポイントかもしれません。しかし、構造化面接はこうした外形的なメリットに留まらず、採用過程そのものを効率化・合理化できる可能性を秘めた手法です。 以下では、構造化面接によって期待できるメリットについて、具体的に解説します。 話の流れに左右されない あらかじめ質問の内容・順番を固定しておくことで、話の内容や流れに左右されることなく面接を進められるようになります。そのため、「聞きたいことが聞けなかった」という失敗のリスクを抑えられるでしょう。 構造化されていない面接の場合には、面接官の経験や回答者との相性に依存する面が多くなりますが、構造化面接においてはこれらの「ブレ」を最小限に留められるため、客観的データを引き出しやすいと考えられます。 しかし面接をマニュアル化することで、その質を一定以上に保つことができる一方で、マニュアル外の内容を聞き出したり、評価したりすることには向いていません。そのため「話の流れに合わせて聞きたいポイントを掘り下げる」という展開は難しいでしょう。 比較検証が容易 質問の内容や順序を均一にすることは、複数の応募者を客観的に比較するうえでも有効です。面接が行われた時期や場所にかかわらず、同様のフレームワークで比較検証が可能なため、評価の客観性も担保しやすくなります。 さらに、過去のデータからフィードバックを得やすいことも、構造化面接の特徴です。面接時の回答内容と、入社後のパフォーマンスの相関性などを追跡調査することで、その後の採用効率を高められるでしょう。 そのため、採用方針が確定しており、長期にわたって多くの応募者を評価する必要があるケースにおいて、構造化面接はとりわけ効果的に働くと考えられます。 応募者の「納得感」が高い 構造化面接は企業側のメリットはもちろん、応募者側にとってのメリットにもつながります。 たとえば、Googleが自社の採用面接を受けた応募者からのフィードバックを分析したところ、「構造化面接を受けて不採用になった応募者の満足度」は、構造化面接を受けずに不採用になった場合よりも「35%」も高い数値をマークしたとされています。 (参照:Google re:Work「ガイド: 構造化面接を実施する」) 面接を受けた応募者に見られる満足度の高さは、構造化面接が「受ける側」にとっても公平かつ客観的に思えることを示しています。このような「納得感」は、応募者側のメリットに留まるものではありません。面接を進めていくなかで、「公平に対応してくれている」という印象が得られれば、それだけ積極的な回答も引き出しやすくなるはずです。 採用制度に対する応募者の信頼感は、「話しやすさ」につながり、ひいては豊富な判断材料を提供してもらうことにもつながるでしょう。

カジュアル面談とは?実施するメリットや基本的な流れについて解説

2022-05-12 01:28:06 2266 view
カジュアル面談とは?実施するメリットや基本的な流れについて解説 採用 経営者や人事担当者の頭を悩ませる課題の一つに、内定辞退や早期退職があります。これを防ぐためには、事前に企業と求職者の間で相互理解を深めておくことが大切です。 そこで今回は、近年導入する企業が増加している「カジュアル面談」について解説していきます。企業側に主導権がある採用面接とは異なり、双方向でコミュニケーションが取れるカジュアル面談は、お互いの理解を深める手段として効果的です。実際に導入することでどのようなメリットが得られるのか、ここで確認していきましょう。 また、後半では、カジュアル面談の基本的な流れやポイントについても解説していきます。導入を検討している方はもちろん、導入したけれど成果が出ていないと感じている方も、ぜひ参考にしてみてください。 カジュアル面談とは カジュアル面談とは、選考の前段階で実施される合否を伴わない面談です。合否判定を目的とした採用面接とは異なり、求職者と企業の相互理解を深めることが主な目的となります。 カジュアル面談と面接の違い カジュアル面談と面接の大きな違いは「合否判定の有無」です。 面接は選考の場であり、最終的に採用の合否を判定します。応募者のスキルや適性をチェックすることを目的としているため、基本的に企業主導で進めることになるでしょう。 一方、カジュアル面談は「親交を深めるための情報交換」を目的としており、合否を判断するものではありません。企業と求職者がお互いを理解し合う場となっているため、フラットな立場で意見交換ができます。採用面接と違って、企業が求職者に対してアピールする機会が多いのも特徴的です。 また、服装や持ち物にも違いがあります。面接はスーツでの参加が基本ですが、カジュアル面談はラフな格好での参加を推奨しているケースが多いです。また、求職者を判断する場ではないため、履歴書や職務履歴書を用意してもらう必要もありません。 カジュアル面談を実施する2つのメリット カジュアル面談を実施するメリットとして、以下の2点が挙げられます。 カジュアル面談を実施するメリット ①選考辞退や採用ミスマッチを防げる ②多くの人材と接点を持てる 詳しく見ていきましょう。 ①選考辞退や採用ミスマッチを防げる 1つ目のメリットは、選考辞退や採用ミスマッチの発生リスクを軽減できることです。 一般的な採用活動は初対面の状態で面接に臨むため、お互いの理解を深めるところから始めなければなりません。企業側は質疑応答で理解を深められますが、求職者側は転職サイトや企業ホームページから得られる情報がメイン。面接中に認識のズレを埋められれば問題ありませんが、求職者が合否のかかる場面で知りたい情報を全て聞き出すことは容易ではないでしょう。 仮に、お互いの認識にズレが招じたまま選考が進んでしまうと、応募当初とのイメージにギャップが生まれてしまい、選考辞退や早期退職のリスクが高くなってしまいます。 その点、カジュアル面談は合否に影響しないため、リラックスした雰囲気で対話できます。お互いが本音に近い状態で話し合えるため、その後の選考辞退や採用ミスマッチのリスクを軽減できるでしょう。 ②多くの人材と接点を持てる 2つ目のメリットは、多くの人材と直接コミュニケーションが取れる点です。 本選考は転職意欲の高い求職者からの応募が大半ですが、カジュアル面談は本選考よりもハードルが低いため、応募が集まりやすくなります。優秀な人材が眠っている転職顕在層と出会えるチャンスも増えるため、今後の人脈を構築する目的で実施するのもおすすめです。 カジュアル面談の流れ ここからは、カジュアル面談の基本的な流れを解説していきます。もちろん、これが正解というわけではないので、進行方法に悩んでいる方は、以下の順序を参考に自社に合ったやり方を探してみてください。 カジュアル面談の基本的な流れ Step1.自己紹介 Step2.ヒアリング Step3.企業説明 Step4.質問タイム Step5.選考の案内 では、1つずつ解説していきます。 Step1.自己紹介 まずは、お互いの自己紹介から始めましょう。 面接のような張り詰めた空気の中では自然体で臨めないため、最初に求職者の緊張を和らげることが重要です。名前や部署名だけでなく、雑談も交えながら会話を広げていき、発言しやすい雰囲気をつくっていきましょう。 また、ここで「選考に関係のない面談」であることを再確認することも忘れてはいけません。求職者の中には、カジュアル面談に対して疑念や不安を抱いている方もいます。「本当は選考の一部なのでは?」と警戒されてしまうと相手が気軽に意見できなくなってしまうため、求職者の不安を払拭するような一言を添えてから本題に入るようにしましょう。 Step2.ヒアリング 自己紹介が終わったら、簡単なヒアリングに移りましょう。 カジュアル面談を有意義な時間にするためには、求職者のニーズを的確に把握することも大切です。「カジュアル面談に参加した理由」や「転職活動を始めたきっかけ」、「興味・関心のある業界」、「自社に対するイメージ」といったような質問から相手の状況や価値観を確認し、伝えるべき情報を整理していきましょう。 Step3.企業説明 ひと通り聞き終えたら、ヒアリング内容をもとに企業説明をしていきます。 マニュアル通りに説明するのではなく、相手の志望度を高められるような流れで話を展開できるとベストです。事業内容、業務内容、待遇、福利厚生のうちどの情報が最も効果的なのか、相手の反応を見ながら話題を組み立てていきましょう。 また、説明が一方通行にならないような工夫も必要です。定期的に質問タイムを挟むなど、相互コミュニケーションが取りやすい状況を作っておくとよいでしょう。 Step4.質問タイム 企業説明後に、質問の時間を設けましょう。 人によっては質問を遠慮してしまう可能性もあるため、求職者が聞きづらい事柄(労働環境や職場の雰囲気など)については、企業側から発信してもよいかもしれません。 また、このタイミングでオフィス内を案内するのもおすすめです。職場の雰囲気を実際に確認する機会を設けることで、印象に残りやすくなるでしょう。 Step5.選考の案内 最後は、選考の案内で締めくくりましょう。 面談から時間がたってしまうと応募意欲が薄れてしまうため、なるべく当日中に案内することを推奨します。ただし、その場で結論を迫ってしまうのはNGです。あくまで「案内」というスタンスは崩さないようにしましょう。 カジュアル面談を成功させる3つのコツ カジュアル面談のゴールは、「企業理解を深めた上で選考に応募してもらうこと」です。 そこで最後に、カジュアル面談を成功させるコツをお伝えします。 カジュアル面談を成功させるコツ ①選考のような雰囲気を出さない ②情報を提供する ③現場の社員にも参加してもらう それぞれ詳しく見ていきましょう。 ①選考のような雰囲気を出さない カジュアル面談で最も重視すべきポイントは「雰囲気づくり」です。 リラックスした雰囲気であれば本音に近い意見を引き出せますが、緊張感の漂う雰囲気では建前上の意見や回答しか得られません。特に「志望動機」や「自己PR」といった面接の定番質問をしてしまうと、相手に警戒心を抱かれてしまうため要注意です。 「面談」と言いながら「面接」の雰囲気を出してしまうと相手に悪印象を与えてしまう可能性も高いため、リラックスできるような雰囲気づくりを念頭に置いて面談を進めるようにしましょう。 ②情報を提供する カジュアル面談は、求職者と企業がお互いの理解を深めるために、情報を交換する場です。面接のように求職者の話を聞き出すだけでは双方にとってプラスにならないため、企業側からも自発的に情報を提供するようにしましょう。 また、企業理解をより深めてもらうために、あらかじめ資料を渡しておくのもおすすめです。 ③現場の社員にも参加してもらう 採用ミスマッチを防ぐためには、入社前に現場のリアルな意見を伝えることも大切です。入社後のギャップを生まないためにも、メリットとデメリットを両方共有しておきましょう。 可能であれば、現場で働く社員の口から伝えてもらうのがおすすめです。特に専門性の高い職種の場合は、経験者でないとわからない不安や悩みを抱えているケースが多いため、現場の社員に同席してもらうことで、よりリアルな情報を提供できるでしょう。 まとめ 今回は、カジュアル面談の導入メリットや基本的な進め方、成功させるコツについて解説してきました。 面接よりもフランクな雰囲気で対話できるカジュアル面談は、内定辞退や採用ミスマッチを防ぐための手段として効果的です。また、転職潜在層に対して直接アプローチできる絶好の機会にもなります。面談時には転職を考えていなくても、将来的に転職活動を再開した際に候補の1つとして検討してもらえるかもしれません。 求職者と良好な関係を構築するためにも、ぜひこの機会にカジュアル面談の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

人事業務における「コンピテンシー」とは?評価項目やモデル設定の方法を紹介

2022-05-12 01:25:29 1145 view
人事業務における「コンピテンシー」とは?評価項目やモデル設定の方法を紹介 人材採用や査定の場面をはじめ、人事においては「多様な人材をどのように評価するか」が重要になります。明確な基準にもとづく適正な評価は、従業員のパフォーマンスの指針となり、経営を長きにわたって安定させるための鍵になるでしょう。 しかし、評価基準を定めるにあたり、多面的な観点を整理することは簡単ではありません。スキルや経験、業績など、可視化されやすいポイントのほか、課題解決への取り組み方や、物事の捉え方など、客観的に評価することが難しい観点も多いです。評価が主観的になったり、基準に偏りがあったりすれば、自社にマッチしない人材に高い評価を与えることにもなりかねません。 総合的な観点から評価システムを設計するうえで、武器になるのが「コンピテンシー」という考え方です。高い業績を上げている人物の「行動特性」を評価基準に落とし込むことで、実情に合った指針を得やすくなるでしょう。 この記事では、コンピテンシーの概要をふまえ、活用できる場面や、評価における項目例を紹介していきます。 コンピテンシーとは コンピテンシー(competency)とは、英語で「資質」や「能力」といった意味を持つ言葉です。とくにビジネスシーンにおいては、「業務において高いパフォーマンスを発揮する人の行動特性」を指す言葉として用いられます。 高い業績を残すなど、会社にとって望ましい働きを見せている従業員をモデルにすることで、「実際にどのような要素がパフォーマンスにつながるのか」が見定めやすくなります。多くの場合、現実に表れている結果をもとに指標を作るため、現場の実情と乖離が生じにくい点がメリットです。 実際に、「指標としてどのような項目を盛り込むか」は会社の状況やモデルになる従業員の特性によって異なります。スキルや能力のほか、価値観や思考様式、動機づけの方法など、可視化されにくいポイントも含んだ総合指標として、採用や人事評価、人材開発といった場面で有効に活用できるでしょう。 コンピテンシーのモデル設定 一般的に、客観的なコンピテンシーの指標を作るには、自社にとって望ましい働きをする従業員をモデルに、その特性を多角的な観点から分析することが必要になります。 もちろん、現に在籍している従業員だけでは指標作成の材料として十分ではないケースもあるでしょう。そのような場合には、現実の人物をモデルとする方法だけではなく、自社業務において求められる要素を分析し、仮想的なモデルを設計する方法が用いられることもあります。実際の状況に応じたモデル設定が、コンピテンシーの指標を作る際のポイントです。 実在モデル もっともスタンダードな方法は、自社で高いパフォーマンスを上げている人物をモデルに、コンピテンシーを設計するやり方です。 実際に業績を出している従業員を分析するため、設計した指標が机上の空論に陥りにくい点がメリットです。一方で、現実の人物に指標が左右されるため、「現状では気づかれていない重要なポイント」を見落とす可能性もあるでしょう。 また、人物の特性を指標に落とし込むプロセスは決して簡単ではありません。「その人の何がパフォーマンスにつながっているか」を正確に見通し、「どうすればその要素を適切に評価できるか」について抜け目なく検討していくことが要求されます。 多角的な観点を取り入れるうえで、複数の人物をモデルとすることも有効でしょう。業務や職務ごとになるべく細かく、求められる要素をピックアップすることが大切です。 理想モデル 実際の従業員だけで多角的な指標を作成できない場合には、実在しないモデルを用いて検討していく必要があります。業務内容から、求められる資質や能力、マインドセットなどを分析し、自社にとっての「理想的人材」をモデルとして構築していきましょう。 この方法のメリットは、現実の従業員の特性を事細かに分析する必要がないために、指標の設計がスムーズにいきやすい点です。一方で、実在の人物に則して設計されていないため、「ハードルを上げすぎて現実の状況と乖離してしまう」という事態に陥る可能性もあります。 指標としてうまく機能させるには、業務遂行に必要なポイントを絞り込みながら、基準としての精度を高めていく必要があります。項目に被りや漏れがないかをチェックしつつ、それぞれの項目の解像度を高めていきましょう。 ハイブリッドモデル ハイブリッドモデルは、実在モデルと理想モデルの両者を混在させた方法です。実在の人物をモデルとしながら、「その人には備わっていないけれども、業務上重要だと思われるポイント」を補っていく形で用いられます。 実在の人物だけを参照していると、やはり指標に偏りが生じる可能性もあります。一方、完全に仮想的なモデルをもとに作成した指標は、「実際の結果」が見通せません。両者の手薄なポイントを補いつつ、「多角的」かつ「現実的」な指標を作るうえで、ハイブリッドモデルを採用する意義は大きいでしょう。 コンピテンシーを活用できる場面 コンピテンシーによる評価は、人事のさまざまな場面で有効に活用することができます。以下では、実際に多くの企業がコンピテンシー評価を取り入れている場面を紹介します。 人事評価 人事評価にコンピテンシーの観点を取り入れるメリットは、従業員の「行動の過程」を評価の対象にしやすくなる点にあります。数字ばかりではなく、「仕事への取り組み方」といったポイントも客観的に評価できるため、従業員の納得感にもつながりやすいのです。 評価に対する従業員の不満が募りやすいポイントとしては、「基準の不明瞭さ」が挙げられます。とくに人事担当者のごく一部のみが評価を担っている場合、「好き嫌いで評価を変えているのでは」など、主観性に対する疑念が生じる可能性もあるでしょう。 一方で、業績ベースの能力評価も、従業員の意識を結果や数字に偏重させてしまうおそれがあります。視点が短期的になったり、職場の雰囲気がピリピリしたりと、安定した労働環境を作るうえでは好ましくない状況に陥るケースも珍しくありません。 「行動特性」に焦点を当てたコンピテンシー評価は、「行動が結果に結びつく過程」を評価対象にするために、現場の感覚とも乖離が少なく、「可視化されにくいが業務において本質的なポイント」も評価しやすいメリットがあります。 ただし、評価システムの設計が複雑になりやすく、また1人のモデルでは観点が偏りやすい点には注意が必要です。評価の公平性を担保するために、複数のモデルから総合的にコンピテンシーを分析し、多くの項目に落とし込むことが求められます。 人材採用 採用の場面においても、コンピテンシーによる評価を導入することで、自社で活躍しうる人材を見極めやすくなるでしょう。可視化されにくい「考え方」や「価値観」といったポイントも評価の対象にできるため、自社とのマッチングを総合的に判断することが可能です。 評価基準を入念に設計し、事前にしっかりと共有しておくことで、面接官が異なる場合にも評価のばらつきを抑えられるようになります。基準を設計する際には、業種や職種ごとにパフォーマンスの高い従業員を複数選定し、それぞれの分野で求められる要素を整理していくとよいでしょう。 「何を評価の対象とするか」はもちろんですが、「面接時の回答をどう評価するか」を明確にすることも重要です。用意した質問を事前にさまざまな従業員に答えてもらい、パフォーマンスの高い社員にはどのような特徴があるかなど、時間をかけて検証しておく必要があります。 人材開発 研修や訓練などの人材開発の場面でも、コンピテンシーの観点は有効です。現に自社にいる従業員のパフォーマンス向上を図る際、具体的なモデルがあることで、社員教育の方向性を明確にできるでしょう。 仮に、模範社員が自社に在籍していたとしても、漠然と「あの人のようになってほしい」と考えているだけでは、他の従業員の指針とすることはできません。模範社員の行動特性を分解し、客観的に整理した基準を提示することで、「課題解決にはこういう思考のステップを踏めばいい」といった指針を共有できるでしょう。 コンピテンシーの項目例 コンピテンシーの評価軸として、どのような項目を取り入れるかは企業によって異なります。自社の環境や、モデルとなる従業員の特性から、必要な項目を設定していく作業が必要です。 以下ではコンピテンシー評価において採用される項目の例として、ハーバード大学が公開している「Competency Dictionary」から、いくつかの項目を抜粋して紹介します。 なお、評価システムを設計する際には、それぞれの項目に対して「どの程度該当するか」を段階的に評価する形を取るのが一般的です。たとえば5段階評価の形で、具体的な到達基準をレベル別に設定する、といった方法が多く取り入れられています。 (以下参照:“Harvard University Competency Dictionary”) 課題解決に関する項目 目の前の課題に対してどのように取り組み、どのような解決のステップを導き出していくか、というポイントに関する項目です。 課題分析と課題解決 論理的な思考によって問題の原因を特定し、適切な現状分析を通じて具体的な解決策を導出する力です。複数の解決策を準備しつつ、組織にとって最良の方法を多角的に検討することが求められます。 戦略的思考 長期的な目標を達成するにあたり、関連性の高い問題を特定し、論理的な推察にもとづくプランを段階的に設定しながら、継続的に取り組むことができる力を指しています。課題解決までの見通しの立て方や、戦略の設計・評価の適切さ、実行に移す能力などが評価の対象になるでしょう。 イノベーション 課題解決にあたり、革新的な方法を取り入れていく態度を指す項目です。さまざまな情報源から着想を得て、通例とは異なる観点を柔軟に受け入れ、これまで実践されていない方法を試し、その効果を適切に評価するという一連のプロセスが求められます。 チームビルディングに関する項目 組織の一員として、他の従業員と協働しながら、共通の目標を達成していく際に求められる要素です。 コミュニケーション能力 他者が必要としている情報を適切に伝え、また他者の考えを正確に読み取る力を意味します。口頭やテキスト、プレゼンテーションなど媒体や場面に合わせた方法を通じ、自分の思考やアイディアを表現しつつ、他者の主張にも耳を傾け、望ましい方向へと議論を導いていく態度が求められます。 視点と価値観 組織の理念や方針を適切に理解し、それをメンバーと共有しながら、チームの意思決定や個々の行動の前提に置く態度です。組織の理念を日々の行動に落とし込む理解力や、チームの方針に沿って活躍しているメンバーを認める視野の広さが必要になるでしょう。 多様性の評価 チームのメンバーそれぞれの能力や考え方、着眼点などを認め、適切に評価する態度を意味します。自分とは異なる特性を持つ他者のことを受け入れ、相互のパフォーマンスを高めていける関係構築の力も、評価の対象になるでしょう。 マインドセットに関する項目 長期的なビジョンを持って働き、成長を続けていくうえで必要となる要素です。 継続的な学び 新しい知識やスキルを学べる場面に積極的に関わり、学んだ内容を現実に応用しようとする態度です。学びの必要性をその都度明確にしながら、質問やメモ、フィードバックなどを通じて学びを最大化する意識の高さも求められます。 優秀さの追求 自身や他者を評価する際に、高いパフォーマンスを基準にする態度を指しています。とくに「自分に対する要求の高さ」として表れることが多く、自分自身の内的なルールとして、業務の量や質などについて明確な基準を据える傾向があります。 意思決定 課題やチャンスを正確に捉え、異なる情報源からのデータを比較検討しながら、結論を導き出す力です。さまざまな可能性が予想されるなか、その時々における状況の変化を見極めつつ、望ましい結果につながる行動を適切に選ぶ力でもあります。 まとめ コンピテンシーによる評価は、実際に成果を出している従業員の行動特性をベースにしているため、現実との乖離が起きにくいことが特徴です。適切に評価システムを設計できれば、「自社にマッチした人材」を客観的な指標として表すことができ、評価に明確な軸が据えられるでしょう。 コンピテンシー評価は採用や人事評価、人材開発において強力なツールとなる半面、評価システムの設計に多くのリソースが必要になるケースも少なくありません。モデルとなる従業員の選定や、インタビューなどを通じた情報収集、パフォーマンスにつながる要素の特定、その要素を正確に評価するための制度構築というように、多くのプロセスが要求されます。さらに、設計段階で「観点の漏れ」があれば、評価軸として機能しなくなるおそれもあるでしょう。 設計には時間をかけて、なるべく多くの人物の観点を取り入れながら、重要なポイントを精査していくことが大切です。評価制度のアウトソーシングも選択肢ですが、その際にもしっかりと、「パフォーマンスを左右する要素」や「その要素をどう評価するか」を理解しておく必要があります。