企業経営において、人材の確保や定着のために要するコストは決して小さくありません。職場環境を改善し、雇用の安定化を図ろうとしても、費用の負担が大きく断念せざるをえない場面も考えられます。
雇用体制や労働環境の整備に取り組む企業を後押しすべく、政府は雇用関連の助成金・補助金をさまざまに用意しています。休暇制度の導入や研修の実施など、場面や用途に応じた助成制度が揃っているため、自社の現状や課題に合わせて利用することで、大幅に負担を削減できるケースもあるでしょう。
2021年9月現在では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業主に対する一時的な助成も行われており、従業員の雇用継続に悩む経営者にとって有力な選択肢となるはずです。
この記事では、雇用に関連する助成金のうち、とくに中小企業が利用しやすいものをピックアップして紹介していきます。
雇用維持のための助成金
新型コロナウイルス感染症の影響により、従業員の雇用を維持することが難しくなっている事業主を対象とした助成金を紹介します。
産業雇用安定助成金とは
「産業雇用安定助成金」は、新型コロナウイルスの影響により事業を縮小した事業主が、従業員の雇用を維持しながら「他企業への出向」を行う場合に、要した費用の一部を助成する制度です。出向元と出向先のいずれもが助成対象となります。
受給条件
出向元企業として助成を受けるには、1ヶ月の売上高や生産量などが基準年の同月に比べて「5%以上」減少していることが条件とされています。基準年となるのは基本的に前年ですが、すでに前年度もコロナ禍の影響を受け指標が下がっている場合など、2年前の数字を適用できるケースもあります。
対象となる労働者は雇用保険の被保険者です。その他の条件として、出向にあたって労使間の協定が結ばれていること、解雇や雇用量の減少がないことなどが定められています。出向期間の賃金が、従来の水準と同程度(85%~115%)に保たれていることも条件です。
出向元と出向先が「親会社と子会社」など、相互の独立性が認められない場合についても、一定の要件を満たせば助成対象となります。詳しい規定については、厚生労働省サイト内の該当ページをご確認ください。
支給額
助成金の区分として、「出向初期経費」と「出向運営経費」の2種類が用意されていますが、受給要件に違いはなく、どちらも出向元・出向先双方を対象にしています。
「出向初期経費」は、出向に際して必要な環境を整えることを目的とした助成です。支給額は定額で「1人あたり10万円」ですが、異業種間の出向など、要件によっては「1人あたり5万円」が上記に加算されるケースもあります。
これに加えて、「出向運営経費」として出向中に必要となる経費(賃金や教育訓練、労務管理に要する費用など)の一部が支給されます。助成率は中小企業の場合で80~90%(親会社と子会社など、相互の独立性が認められない企業間での出向の場合には「2/3」)であり、1日12,000円が上限です。
(参照:厚生労働省「産業雇用安定助成金」)
雇用調整助成金とは
「雇用調整助成金」は、経済上の理由によって事業の縮小を余儀なくされた事業主のうち、休業手当や職業訓練など、雇用維持のための措置を講じる事業主を対象とする助成制度です。2021年9月現在、新型コロナウイルス感染拡大に対する特例措置が取られており、助成対象や助成額が拡大されています。以下では、この特例措置の概要について解説します。
特例措置の対象期間
2020年4月1日から2021年9月30日までの間に、従業員に休業手当などを支払った期間が助成対象です。
受給条件
対象となるのは「最近1ヶ月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少」した企業です。前年すでにコロナ禍の影響を受けていた場合など、比較する月については柔軟に取り扱われます。これらの企業のうち、休業に伴う雇用調整をはじめ、雇用を維持するための措置を実施する事業主が助成対象です。
休業のほか、職業訓練や出向も助成対象となります。なお、これらの措置を講ずるにあたって、労使間の協定が結ばれていなくてはいけません。
対象となる従業員は雇用保険の被保険者です。これに該当しない学生アルバイトなどは、後述の「緊急雇用安定助成金」の対象となります。
支給額
支給額は「平均賃金×休業手当等の支払率×助成率」で算出されます。助成率は要件や申請期間によって異なりますが、中小企業の場合は「80%~100%」の範囲です。
支給上限は従業員1人あたり1日15,000円(申請期間や地域によっては13,500円)であり、支給限度日数は原則として「1年間で100日分、3年で150日分」ですが、特例期間中においてはこの上限は適用されません。
(参照:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」)
緊急雇用安定助成金について
「雇用調整助成金を申請したいが、従業員が雇用保険の被保険者でない」という場合には、「緊急雇用安定助成金」を利用することになります。助成内容や申請先などは、雇用調整助成金に準じますが、緊急雇用安定助成金の場合にはもっぱら「休業」が対象とされており、出向や教育訓練は対象となりません。
詳しい申請方法については、厚生労働省サイトの該当ページから、「緊急雇用安定助成金支給申請マニュアル」をご確認ください。
労働条件や職場環境の整備に対する助成金
定着率や生産性の向上を図るうえで、休暇制度や評価制度などの体制面を整える意義は大きいでしょう。制度の新設には少なからずリソースやコストが必要になりますが、こうした「職場づくり」を補助する助成金も数多く存在しています。
なお、以下に紹介する助成金のうちには、それぞれの要件に応じて支給される額のほかに、厚生労働省の定める「生産性要件」を達成することで額が加算されるシステムが採用されているものがあります。生産性要件の詳しい基準値や計算方法については、厚生労働省サイト内の該当ページをご確認ください。
人材確保等支援助成金
「人材確保等支援助成金」は、働きやすい職場づくりに取り組む事業主を支援するための助成制度です。取り組み内容に応じて9つのコースが用意されていますが、以下ではとくに中小企業にとって利用しやすい3つのコースを紹介します。
雇用管理制度助成コース
離職率低下を目的に、各種社内制度を整備する事業主を対象としたコースです。具体的には、「研修制度」「諸手当等制度」「メンター制度」「健康づくり制度」「短時間正社員制度」のいずれかについて、導入計画を労働局に提出し、離職率の引き下げ目標を達成することで助成の対象となります。
支給額は57万円(生産性要件を満たす場合には72万円)です。
(参照:厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」)
人事評価改善等助成コース
生産性向上を図るため、従業員の能力や成果を適切に評価し、それを賃金に反映できる制度設計に取り組む事業主が対象となるコースです。
支給条件として、制度の整備計画申請から3年後の生産性が6%以上向上している必要があります。その他、評価制度を適用した労働者の賃金が2%以上向上していること、実施後1年間の離職率が上昇していないことなど、具体的な数値が条件として設定されています。
従来は制度構築にかかる費用も助成対象でしたが(制度整備助成)、2021年度より撤廃され、数値達成に伴う「目標達成助成」のみの支給となりました。支給額は80万円です。
(参照:厚生労働省「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」)
テレワークコース
新規にテレワークのための環境を整える中小企業に対し、その導入費用などを補助する制度です。導入計画を労働局に提出し、実際に従業員のテレワーク勤務を開始することが要件となります。
支給される助成金は、「機器導入助成」と「目標達成助成」の2種類です。まず「機器導入助成」として、環境整備にかかった経費の30%が支給されます。対象となる経費には、機器の導入費用のほか、就業規則などの改定、労働者や管理者への研修、外部専門家によるコンサルティングなどに要した費用も含まれます。
「目標達成助成」は、離職率やテレワークの実施率といった要件を満たした場合に、経費の20%が支給される制度です。対象経費は機器導入助成と同様となります。
(参照:厚生労働省「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」)
両立支援等助成金
「両立支援等助成金」は、従業員が仕事と介護・育児などを両立できるよう、休暇制度や勤務制度の整備に取り組む事業主への助成制度です。取り組むポイントに応じて6種類のコースが用意されており、中小企業を主な対象としたものも多いです。
ライフワークバランス改善に寄与する諸制度は、労働者のニーズも高く、定着率にも少なからぬ影響を及ぼします。中小企業が「働き方改革」を実践するにあたり、以下の助成制度は力強い味方となってくれるでしょう。
(以下参照:厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」)
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
男性労働者が育児休暇を取得しやすい職場づくりに取り組む事業主を対象としたコースです。男性による育休取得を促進する職場風土を形成するため、研修や資料配付を行い、実績があった企業に助成がなされます。
従業員の育休取得に伴う支給額は、1人目の育児休暇取得の時点で57万円、2人目以降は育休期間により「14.25~33.25万円」です(中小企業の場合)。加えて、「育児休暇取得前の個別面談の実施」などの要件を満たした場合には、「個別支援加算」として1人目に10万円、2人目には5万円が追加されます。
また、「制度の導入」を対象とした助成枠も設けられています。育児を目的とする休暇制度を新たに導入し、就業規則に明記したうえで労働者へ周知を行い、実際にこれを利用する者があった場合が対象となり、支給額は28.5万円です。
※「生産性要件」を満たす場合、上記の金額はいずれも増額されます。
介護離職防止支援コース
従業員が介護休暇を取得したり、事業主が介護を支援するための就労形態を導入したりした場合の助成であり、中小企業を対象とした制度です。
具体的には、従業員の状況に合わせて「介護支援プラン」を都度作成し、これに沿って休職・復職がなされる必要があります。実際に介護休暇の取得者が生じた場合に「28.5万円」、さらに取得者が職場復帰した際に「28.5万円」が支給されます。
「取得時の助成」のほか、「制度の導入」も助成対象です。介護を目的とするフレックスタイム制や、在宅勤務などの就労形態を用意し、それを従業員が利用した際にも「28.5万円」が支給されます。
※「生産性要件」を満たす場合、上記の金額はいずれも増額されます。
なお、2021年9月現在、このコースには「新型コロナウイルス感染症対応特例」が用意されています。当該感染症への対応を理由に介護休暇を利用できる制度を設け、従業員に周知し、実際に5日以上の利用者があった場合に20万円(10日以上の休業の場合には35万円)が支給される制度です。特例措置の詳細については、厚生労働省サイト内の該当ページから、PDF資料「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」(リーフレット)」をご確認ください。
育児休業等支援コース
育児休暇の取得・職場復帰の円滑化に取り組む中小企業を対象としたコースです。「従業員の育休取得時」と「復帰後の保育支援制度導入時」のそれぞれに対し、助成枠が用意されています。
育休取得時に助成の対象となるには、事前の個別面談と、育休から復帰までのプラン作成が必要です。実際にプランに則した利用者があった場合に、育休取得時と職場復帰時それぞれに「28.5万円」が助成されます。
加えて、育児休暇に伴い、その代替要員を確保した場合には、1人あたり47.5万円(有期雇用労働者の場合には9.5万円)が支給されます。
保育支援制度導入に対する助成は、「子どもの看護休暇制度」や「保育サービス費用の補助制度」を導入する事業主が対象です。支給額は28.5万円であり、さらに制度の利用者があった場合には、看護休暇であれば「1,000円×時間」、保育サービスの利用であれば「実費の2/3」が支給されます。
※「生産性要件」を満たす場合、上記の金額はいずれも増額されます。
なお、2021年9月現在、このコースにも新型コロナウイルス感染症対応の特例が用意されています。小学校などの臨時休業があった場合の育児・保育を支援する制度を導入した事業主に対し、制度利用者1人あたり5万円を支給する制度です。こちらの特例については、厚生労働省の該当ページをご確認ください。
女性活躍加速化コース
女性労働者に対して採用や昇進の機会を積極的に提供し、働きやすい職場づくりに取り組む中小企業を対象としたコースです。
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」にもとづき、女性の従業員が出産や育児を理由に退職することなく、自身の望むキャリアを続けられるような環境を整えるため、具体的な数値目標を含む事業計画を策定し、実際にこれを達成した事業主が支給対象となります。支給額は47.5万円(生産性要件を満たす場合には60万円)です。
不妊治療両立支援コース
従業員が不妊治療を行う際に利用可能な休暇制度や就労形態を用意し、適切に運用する中小企業が対象となるコースです。
要件としては、「不妊治療に利用しうる制度の導入と周知」、「従業員の相談に対応し、『不妊治療支援プラン』を作成する『両立支援担当者』の選任」が必要です。
実際に支援プランに沿った利用者があった際に、28.5万円が支給されます。さらに、20日以上の長期休暇があり、その後原職に復帰させ3ヶ月以上継続勤務させた場合には28.5万円が加算されます。
※「生産性要件」を満たす場合、上記の金額はいずれも増額されます。
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース
コロナ禍における特例対応として設置されたコースであり、妊娠中の従業員を対象としています(対象期間は2022年1月31日まで)。
従業員が保健指導や健康診断を受け、「新型コロナウイルスへの感染リスクに対する不安やストレスが母体や胎児にとってのリスクとなりうる」といった理由により、医師などが休業の必要性を認めた際、当該従業員に有給休暇制度を利用させた事業主に28.5万円が支給されます。
キャリアアップ助成金
有期雇用労働者や派遣労働者など、非正規雇用の従業員のキャリアアップを目的とした助成制度です。正社員採用や、処遇改善を行った事業主が対象となります。
なお、キャリアアップ助成金の詳しい内容については、当メディアの過去記事にて扱っておりますので、こちらをご参照ください。
採用・研修の場面で活用できる助成金
採用枠の拡大や、研修制度の充実も、雇用の安定化を図るうえで有力な選択肢となります。ここでは、人材の確保や従業員の能力開発を目的とする取り組みへの助成制度を紹介します。
中途採用等支援助成金
「中途採用等支援助成金」は、中途採用枠の拡大や、東京圏からの移住者を積極的に採用する事業主などを対象とした助成制度です。要件によって、3つのコースに区分されています。
中途採用拡大コース
「中途採用率の拡大」または「45歳以上の初採用」を行った事業所を対象とするコースです。
いずれのケースにも共通する要件として、労働局への「中途採用計画」の提出が挙げられます。中途採用に関して雇用管理制度を整える見通しや、それを実施する期間について定める書類です。
「中途採用率の拡大」と見なされるのは、対象期間中の中途採用率が過去3年間に比べて「20ポイント以上」上昇している事業所です。かつ、期間中に雇用した中途採用者の6ヶ月後の離職率が20%に満たない場合に、「中途採用拡大助成」として1事業所あたり50万円(中途採用率を40ポイント以上向上させた場合は70万円)が支給され、さらに「生産性向上助成」として1事業所あたり25万円が支給されます。
「45歳以上の初採用」は、これまで45歳以上の採用をしたことがない事業所が対象です。当該求職者を採用した際に、「中途採用拡大助成」として1事業所あたり60万円(60歳以上を中途採用し、6ヶ月以上継続雇用している場合には70万円)が助成され、これに加えて「生産性向上助成」として1事業所あたり30万円が支給されます。
その他、中途採用に関する情報を公開し、要件に合致する求職者を10人以上(中小企業は2人以上)採用した事業所には、「中途採用拡大助成」として1事業所あたり30万円と、「生産性向上助成」として1事業所あたり15万円が支給されます。さらに、中途採用者の離職率がそれ以前よりも低下した場合には、定着助成として1事業所あたり20万円が追加される制度です。
(参照:厚生労働省「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」)
UIJターンコース
「地方創生推進交付金」を活用し、UIJターンを行う労働者を採用する事業所を対象としたコースです。東京圏からの移住者を、地方公共団体のマッチングサイトなど規定の媒体を通じて雇用することが主な要件とされています。
就職説明会に要した交通費や宿泊費など、採用にかかった経費の一部が助成の対象です。中小企業の場合には、100万円を上限に経費の50%が支給されます。
(参照:厚生労働省「中途採用等支援助成金(UIJターンコース)」)
生涯現役起業支援コース
40歳以上が起業し、従業員を雇用した際、募集や採用、職業訓練に要した費用の一部を補助する制度です。
40~59歳が制度を利用する場合、150万円を上限として費用の50%が助成されます。60歳以上の場合には、200万円を上限に2/3が助成されます。
(参照:厚生労働省「中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)」)
トライアル雇用助成金
「トライアル雇用助成金」は、職業安定所で支援を受けている求職者や、障害者などを原則3ヶ月間試用する際の助成制度です。
支給額は対象者1人あたり月額最大4万円(要件により増額あり)で、内容により大きく4つのコースに区分されます。
「一般トライアルコース」は、職業安定所で就職支援を受けている55歳未満の求職者を対象とした制度です。その他、障害者を対象とする「障害者トライアルコース」および「障害者短時間トライアルコース」、新型コロナウイルス感染症の影響で離職を余儀なくされた求職者を対象とした「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」および「新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」、建設業において35歳未満の若年者または女性を対象とする「若年・女性建設労働者トライアルコース」が用意されています。
それぞれの詳細については、以下のリンクをご参照ください。
人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、キャリア形成において有用な専門知識・技能を従業員に身につけさせるため、職業訓練の実施や、訓練のための休暇付与を行った事業主に対する助成制度です。
訓練の形態や内容によって7つのコースが用意されています。以下では、とくに利用例の多い3つを紹介します。
(以下参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)」)
特定訓練コース
訓練を実施した際、期間中の賃金や実施に要した費用を助成する制度であり、とくに効果の高い方法・内容で行われる訓練を10時間以上行った事業主が対象です。OFF-JT(業務外訓練)のみの実施と、OFF-JTにOJT(業務内訓練)を兼ねた実施とで条件が異なります。
OFF-JTのみの場合は、「労働生産性向上訓練」「若年人材育成訓練」「熟練技能育成・承継訓練」「グローバル人材育成訓練」のいずれかに該当する内容を扱うことが要件です。
OJTを兼ねる場合には、厚生労働大臣の認定を受けた方法により訓練を実施する必要があります。
助成額は、OFF-JTの場合で1人1時間あたり760円(上限は1,200時間)、OJTの場合で665円(上限は680時間)です。その他、対象となる経費の45%が支給されます(いずれも「生産性要件」を満たす場合には増額)。
なお、経費助成の上限は訓練時間によって異なります。100時間未満で15万円、100時間以上200時間未満で30万円、200時間以上で50万円という上限規定です。
一般訓練コース
職務に関連した専門的な訓練のうち、上述の「特定訓練」に該当しないものを20時間以上実施する事業主を対象としたコースです。
形態はOFF-JTのみであり、賃金助成として1人1時間あたり380円(上限は1,200時間)が支給されるほか、経費助成として対象経費の30%が支給されます(いずれも「生産性要件」を満たす場合には増額)。
経費助成にあたっては、100時間未満で7万円、100時間以上200時間未満で15万円、200時間以上で20万円の上限が設けられています。
教育訓練休暇付与コース
従業員が社外で教育訓練や検定などを受ける際、これに必要となる休暇を与えた事業主に助成がなされる制度です。教育訓練のための休暇制度を導入し、実際に利用者が生じることが主な要件となります。
休暇期間が数日の場合には「教育訓練休暇制度」、数ヶ月の場合には「長期教育訓練休暇制度」という助成枠が適用されます。「教育訓練休暇制度」の助成額は30万円です。「長期教育訓練休暇制度」の場合には、賃金助成として1日1人あたり6,000円(最大150日)が支給され、さらに経費助成として20万円が支給されます。
※「生産性要件」を満たす場合、上記の金額はいずれも増額されます。
まとめ
雇用に関連する助成制度には、生産性や定着率向上を図る企業を対象としたものが多く用意されています。しかし、助成対象となりうる企業であっても、制度を知らないがゆえに必要以上に費用を負担してしまうケースも考えられます。
中小企業が雇用を安定させるうえで、「労働環境や雇用体制の整備」はとりわけ大きな意味を持つでしょう。こうした取り組みを助成する制度は、単に資金面の助けとなるばかりではなく、労働者がのびのびと働ける環境の構築にも寄与するはずです。
自社に合った助成制度を見つけるためには、まず「現状の課題」を浮き彫りにすることが大切です。職場づくりや人材定着にあたり、ボトルネックとなっているポイントを整理し、必要となる措置を検証したうえで、利用できる制度がないかを確かめていきましょう。