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建設業界の特定技能の受け入れを完全解説。メリット・デメリットと抑えるポイント
建設

総務省の統計局労働力調査によると、建設業界全体の就労者のピークは1997年の約685万人。

その後2015年の500万人と比較すると約27%減少しています。

この背景には、高齢化による従事者の引退や若者の建設業離れがありました。

 

その一方で、2015年から2019年では、建設業界にける労働人口の大きな変化はありません。

2015年から2019年にかけて外国人就労者が3倍の推移で増えたからです。

今後、さらに増加していくであろう建設業界の外国人就労者。その中でも特定技能外国人について完全解説していきます。

建設業界における特定技能の概要

建設分野の特定技能は、特定技能運用要領とは別に『特定の分野に係る特定技能外国人の受け入れに関する運用要領-建設分野の基準について』運用要領があります。

なぜ2つあるのかというと、特定技能運用要領=出入国在留管理庁が管轄で特定の分野=各省庁のルールが定められているからです。

建設分野は国土交通省が管轄になります。概要の中のポイントを抜粋してご説明します。

※参考元:「出入国在留管理庁」特定技能外国人の受け入れに関する運用要領

 

受け入れ見込数

2019年に発表された、5年間の受け入れ見込数は建設分野では4万人を想定しています。
コロナ過ではありますが、帰国できない技能実習修了者の特定技能移行者は増えています。

 

建設分野における特定技能の受け入れ人数推移
2019年12月末 2020年3月末 2021年3月末
107名 267人 2116人

※参考元:政府統計の総合窓口(e-Stat)

 

特定技能の建設分野で受け入れが可能な職種は下記

2019年4月1日から始まった特定技能では、制度がまだ整っていない部分もあります。

グレーにしている職種は現状、技能実習では無い職種なので、特定技能評価試験に合格した方しか採用ができません。

 

建設分野における特定技能の受け入れ可能職種
型枠施工 左官 コンクリート圧送 トンネル推進工
建設機械施工 土工 屋根ふき 電気通信
鉄筋施工 鉄筋継手 内装仕上げ/表装 とび
建築大工 配管 建築板金 保温保冷
吹付ウレタン断熱 海洋土木工    

 

国内外の特定技能評価試験の状況

現状コロナ過ということもあり、国外での技能検定評価試験は進んでいない現状です。

国内試験からの合格率、受講者数を参考にしていただければと思います。

また、技能実習での対象職種の試験はまだまだ行われていない現状があります。

※建設は実技試験の難易度が高いため、留学生や他職種からの受講が少ないためです。

 

実施日 地域 職種 移行職種 受験者数 合格者 合格率
2020年8月 静岡 鉄筋接手 ✖ 33人 32人 97%
2020年9月 静岡 土木 ✖ 44人 28人 64%
2020年12月 東京 トンネル 推進工 ✖ 34人 19人 56%
2020年12月 東京 電気通信 ✖ 48人 21人 44%
2021年3月 フィリピン 電気通信 ✖ 5人 5人 100%
2021年3月 ベトナム 鉄筋施工 24人 19人 79%

※参考元:「出入国在留管理庁」特定技能総合支援サイト

▼関連記事
特定技能のデメリットや特定技能の転職について詳しく知りたい方は、別記事「特定技能の転職~建設業における特定技能の転職についても解説~」で解説していますので、そちらもぜひ参考にしてください。

建設分野の特定技能の受け入れ方法と特徴

特定技能を受け入れる方法として5つの方法があります。

1.技能実習から特定技能への移行
2.留学生が技能試験と日本語能力試験を合格し特定技能へ移行
3.海外にいる試験合格者、元技能実習生を採用
4.現在日本にいる技能実習修了予定者を採用
5.特定技能転職者の採用

 

1:技能実習から特定技能への移行

現在雇用している技能実習生を、特定技能に移行することが可能です。

同じ職種で特定技能移行の場合は、技能検定随時3級に不合格の場合でも評価調書があれば特定技能に移行が可能です。

 

2:留学生が技能試験と日本語能力試験を合格し特定技能へ移行

建設以外の職種では、実際合格者も出ていますが実技が重要となる建設職種では留学生からの特定技能試験合格者はかなり少なく、今のところ現実的ではありません。

 

3:海外にいる試験合格者、元技能実習生を採用

技能実習を修了して帰国した方を再度、特定技能として採用する方法です。

1、3の方法では必要ない入国に関する航空券などのコストが別途必要となります。

 

4:日本にいる技能実習修了予定者を採用

現在他社で就業している技能実習修了予定者を採用する方法です。

引き続き同じ実習実施先で就労を希望しない技能実習生または、企業が特定技能移行を希望していない技能実習生を、人材紹介会社を通して採用できます。

 

5:特定技能転職者の採用

特定技能は転職が可能ですので、人材会社を通して紹介または求人媒体等で集客して採用することが可能です。

 

 

受け入れに必要なポイント

技能実習も一緒に検討される場合があると思いますので、わかりやすく比較表でまとめました。

  技能実習 特定技能
建設業法第3条の許可 必要 必要
建設キャリアアップシステム加入 必要 必要
受け入れ人数の制限 あり あり
月給制 ※天候不良60%保証 月給 月給
建設人材機構の会員または賛助会員入会 必要なし 必要
監理、支援について 監理団体または自社 登録支援機関または自社

 

建設キャリアアップシステムの加入

建設キャリアアップシステムの加入は、事業者の登録と技能者の登録が必要です。
2024年には全技能者の登録を目標にしており、技能実習生・特定技能労働者は技能者登録が必須になります。

※参考元:「一般財団法人建設業振興基金」建設キャリアアップシステムHP

 

受け入れ人数の制限

技能実習と特定技能で解釈が違いますので押さえておきたいポイントを紹介します。

 

技能実習での常勤人数

常勤の人数には、外国にある事業所に所属する常勤の職員、技能実習生、外国人建設就労者及び1号特定技能外国人を含みません。

常勤職員数は、代表取締役、役員を除く人数。

 

特定技能での常勤人数

特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人の数と特定活動の在留資格で受け入れる外国人(外国人建設就労者)の数の合計が、特定技能所属機関の常勤の人数(外国人技能実習生、外国人建設就労者、1号特定技能外国人を除く。) の総数を超えないこと。社会保険の加入人数で、常勤職員となる。

①代表取締役 ⇒社会保険加入しており、週5日30時間以上勤務していて社会保険料を一定額以上収めている
※社長は、他の企業で役員をしていないことが前提です。
②役員 ⇒常勤はカウント、非常勤はカウントなし
※常勤非常勤は、週5日30時間以上勤務していて適切な社会保険料を納めていることが前提です。

 

月給制

法改正により、2021年4月以降より技能実習、特定技能ともに月給制が原則となります。
天候不良、現場調整での休みの場合も1日の給料の60%を支払うことが必要です。

 

建設人材機構の会員または賛助会員入会

特定技能のみ建設人材機構の会員または賛助会員の入会が必要になります。

※参考元:「建設人材機構」建設人材機構(JAC)HP

 

監理、支援について

技能実習

一般的に監理団体の管理の元、技能実習生を受け入れます。
※管理は自社でまかなうこともできますが、その場合、厳しい条件をクリアする必要があります。

 

特定技能

一般的に必ず行わなければいけない義務的支援10項目を登録支援機関に委託して受け入れます。
※支援は自社でまかなうこともできますが、その場合、厳しい条件をクリアする必要があります。

 

建設特定技能採用のメリット

作業内容の汎用性が高い

特定技能の作業内容は、技能実習の作業内容と比較して、作業内容の汎用性が高いのが特徴です。
そのため技能実習生と比較して、特定技能外国人は、より日本人に近い作業内容で雇用することが可能です。

特定技能の作業内容については下記のリンクに記載されていますのでご確認ください。

※出典:「国土交通省」

 

日本語レベルが最低N4以上

日本語レベルが最低N4以上の外国人を採用できるため、技能実習から受け入れた場合とでは、言語での意思疎通のハードルが下がります。

外国人が特定技能の在留資格を取得する方法は2つあります。
2つの大きな違いは「試験なし」か「試験あり」かの違いです。

試験なし:技能実習2号修了後、特定技能1号へ移行
試験あり:技能検定・日本語能力試験を合格し、特定技能1号を取得
※日本語能力試験で求められるのは日本語レベルN4以上。技能実習からの移行は試験なしです。

専任技術者になることが可能

一般建設業は、下記の3つの内のどれか1つクリアできれば専任技術者になることが可能です。

・建設業種に応じた国家資格を持っている
・許可を受けようとする建設業種の実務経験が10年以上ある
・許可を受けようとする建設業種で定められた学歴+3年以上または5年以上の実務経験

技能実習から移行し、特定技能2号まで業務を継続した場合は、上記の「許可を受けようとする建設業種の実務経験が10年以上ある」をクリアすることができます。
※技能実習2号から特定技能1号へ移行した場合は特定技能2号でプラス2年の就労が必要

特定技能2号外国人が専任技術者になることで企業側としては、下記の2つのメリットがあります。

・建設業許可の取得と維持が可能 ※専任技術者がいなくなった場合、許可の維持は不可
・新しく営業所や支店を出店することが可能

建設分野の特定技能のデメリット

日本人と同等以上の給与+受け入れ負担金

特定技能外国人は日本人と同等以上の給与設定が義務付けられています。

給料設定は特定技能外国人のキャリア年数と、同等のキャリア年数の日本人の給与を照らし合わせて設定します。

建設業界のみ特定技能1号を採用する際、受け入れ企業が毎月負担しなければいけない「受け入れ負担金」が発生します。

加えて登録支援機関委託費用など、日本人の雇用にはかからない費用が加算されるため実質日本人よりコストは高くなります。

 

受け入れ負担金
1号特定技能外国人の区分  1人あたりの受け入れ負担金の月額
試験合格者(JACが行う教育訓練を受けた場合) 2万円
試験合格者(上記以外の場合) 1万5000円
試験免除者(技能実習2号終了者等) 1万2500円

※参照:建設人材機構(JAC)

 

転職が可能

特定技能は転職が可能です。
特定技能は一定の技能を持った即戦力の採用がですが、その企業と特定技能外国人本人の意向が合わなかった場合は転職可能になります。
転職防止する対策としては、自社内で技能実習からの移行をし、技能実習の期間中に自社を愛してもらう教育やレクリエーションを行なうことで、転職の可能性は大きく減少します。

 

特定技能を受け入れる際の注意点

特定技能の受け入れを進めるうえで注意しておく事前の準備部分を解説します。

雇用条件の整備

従業員数10名以下の企業では就業規則の作成が必須ではありませんが、日本人労働者と特定技能外国人を比較した際に、国籍や言語などが理由で給料差などをつけることはできません。

そのため、あらかじめ社内規則をしっかり決めておく必要があります。

また技能実習生、特定技能労働者は月給になりますので加味して就業規則の作成が必要です。

 

特定技能の給料水準を検討する際には、下記ポイントを押さえてください。

・日本人の3年目の労働者と同一またはそれ以上の給料水準
・各地方労働局の職種別平均賃金から大幅に低くないこと
・技能実習時より給料水準を上げる

建設特定技能受入計画のオンライン申請

特定技能の在留資格申請を行う前に、建設分野に関して国土交通省管轄の建設特定技能受入計画のオンライン申請が必要になります。
ここで主にチェックされることは下記になります。その他提出資料も複数ありますので準備が必要です。

・過去の労働法違反の有無
・日本人労働者との賃金比較、給料の合理的な説明

 

FITS(一般財団法人国際建設技能振興機構)について

FITSとは

FITSとは建設特定技能・特定活動が適正に実施されるために登録支援機関、受け入れ企業に対して巡回指導や、「FITS相談ホットライン」を開設し、外国人からの母国語による電話相談などを行っている機関です。
また、受け入れ後に特定技能の受け入れ後講習を実施する機関になります。

※参考元:一般財団法人国際建設技能振興機構「FITS HP」

 

巡回内容訪問

特定技能1号の受入企業を訪問し、建設特定技能受入計画等にしたがって適正な受け入れが実施されているかを下記の方法で確認し、指導を行います。

・受け入れ責任者や担当者からのヒアリング
・賃金台帳や出勤簿等の書面の確認
・特定技能外国人との母国語での面談
※特定技能は、2019年にできた新しい制度なので巡回訪問の回数等の規定は現状ない状態です。

まとめ

今後ますます人材不足が厳しくなることが予想される建設業界。
本記事では、新たな常識となってくる建設業界の特定技能の受け入れについてご説明させていただきました。
特定技能にもメリット・デメリットがあります。

しかし適正な運用を行なうことで、企業側と特定技能外国人がお互い良い関係で仕事ができると思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。