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技能実習生が失踪する本当の理由とは?問題点と解決策を読み解く
「技能実習生」を雇用することに迷いを覚えることはありませんか。
技能実習制度は単なる労働力を確保するための手段ではなく、技術移転のための国際協力が本来の目的です。しかしながら、実際は技術移転の名目で、労働力として雇用されてきた彼らを取り巻く環境では、「技能実習生の失踪」という大きな課題も抱えています。技能実習生が失踪すると、受け入れ企業はペナルティを抱えることになり、最悪の場合は技能実習生の受け入れ停止措置が下ることもあります。
本稿では、「技能実習生の失踪の現状」「技能実習生が失踪する原因3つ」「失踪を防ぐための解決策3つ」を元技能実習生監理団体職員が解説します。適切な実習生受け入れをして、技能実習生の失踪を防ぎましょう。ぜひ参考にしていただければ幸いです。
外国人材のマネジメント体制の構築に興味や不安がある場合は、こちらもあわせてご覧ください。
技能実習生の不法残留者数は短期滞在資格に次いで2位まず、不法滞在者数の推移と現状を見てみましょう。
2021年1月1日時点では82,868名の外国人不法滞在者が日本に存在しています。推移をみると、2004年、当時の石原都知事下で始まった不法滞在者5年半減計画をきっかけに、219,418人いた不法滞在者は2014年には59,061人へと、約27%まで減少しました。
しかしそこから再び増加に転じ、2021年は対前年比5.2%増となっています。そのうち「技能実習」の不法残留者数は1万3079人と在留資格の中で2位で15.8%を占めます。技能実習生の失踪は国としても大きな問題点であることが分かります。
(参照)「今後の出入国在留管理行政の在り方」令和2年12月 第7次出入国管理政策懇談
(参照)法務省|本邦における不法残留者数について(令和3年1月1日現在)
技能実習生の失踪が起きる原因3つ失踪の原因は大きく分けて3つあります。
- 技能実習生への制度周知不足、本人たちの制度理解不足
- 実習期間終了後も日本に在留する方法と考えている
- 就業企業の劣悪な労働環境、マネジメント力不足
技能実習生への制度周知不足、本人たちの制度理解不足
冒頭でも述べた通り、技能実習制度は、技術移転のための国際協力が本来の目的です。
しかし、技能実習生たちの多くは制度の本来の目的ではなく、「お金稼ぎ」を目的に来日するケースがほとんどです。技能実習制度をよくよく理解せず来日する実習生が存在することはいうまでもありません。
来日後「こんなはずじゃ無かった」状態になり、来日1年足らずで失踪してしまうケースが多い事実があります。
制度の理解が乏しく、制度を上手に活用出来ていないと、受け入れ企業、技能実習生の「日本で働く目的」がちぐはぐなことになってしまい、互いの考えに溝が生まれてしまいます。
実習期間終了後も日本に在留する方法と考えている
実習期間が終了すると、技能実習生は母国に帰国する必要があります。
在留資格である、技能実習1号、2号は1名につき1度しか在留資格を得ることが出来ないため、帰国後も日本で生活をしたい場合は、別の在留資格を取得する必要があります。そのため、技能実習生の中には、技能実習2号(3年間の技能実習)が終わった後も帰国せずに日本で働き続けるために、失踪して不法就労をする人がいます。
就業企業の劣悪な労働環境、マネジメント力不足
技能実習生を受け入れる企業は、人手不足の解消を目的として受け入れるケースも少なくありません。技能実習生を受け入れるにあたり、企業は多くの法律・制度理解(技能実習法、労働基準法など)、実習生を受け入れる業務管理体制が求められます。
技能実習生の多くは「お金を稼ぐ」ことも目的として来日しています。貧しい地域から来日するために借金をして一世一代を賭けている人もいます。「契約書と業務や賃金規定が違う」「最低賃金以下で働かされる」など、労働賃金に対する不満が募ると、より高い賃金がもらえる環境に変えるために、失踪することがあります。
2017年1月から2018年9月にかけて、法務省の「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム」が、失踪者が出た実習実施機関に対して調査を行いました。1,555の機関(失踪者2,025人)に実地調査が行われ、662の機関(失踪延べ人数937人分)で、以下の不正行為が明らかになりました。
残業時間の不適正や割増賃金の不払い、契約賃金違反など、労働賃金に関係する違反が多くを占めています。
法務省「報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」」,令和2年12月,https://www.moj.go.jp/isa/content/001334958.pdf(閲覧日:2021年12月22日)
失踪を防ぐための解決策3つ
次に、失踪を防ぐための解決策を3つご紹介します。
実習制度の理解を深める
技能実習制度を実習生自身も受け入れ企業側もよくよく理解すれば、実習生の権利を最大限に守ることができます。実習生の在留資格を持っている限りは、日本に滞在する権利が得られ、合法的に3年から5年日本に滞在し、お金を稼ぐことができます。失踪してしまえば、不法滞在者となり、得られるはずの権利ははく奪され、先行きは不透明になります。実習生を雇用する企業や、監理団体、送り出し機関は彼らが制度を正しく理解できるよう、技能実習制度運用要領を読み解き、理解し、継続的に実習生に対しても周知、支援していく必要があると考えています。
技能実習3号、特定技能制度の活用を促す
技能実習1号2号を終了し、技能検定等に合格し、一定の条件を満たせばすれば技能実習3号として2年間の技能実習を追加で行うことが出来ます。また、2019年4月より在留資格「特定技能」が新設され、技能実習2号を修了した技能実習生は特定技能1号への移行が可能になり、在留期間をさらに5年延ばすことができます。
技能実習1号、2号、3号を終了し、特定技能に移行すれば合計で10年日本に滞在することが可能となりました。
これを実現するためには、外国籍人材のキャリアプランについて話し合う機会を持ち、本人の意向を確認し、企業が技能実習生のキャリアに寄り添い、スキルアップをサポートすることで、失踪を減らせる可能性があります。
職場の労働環境の見直し、外国人材管理のノウハウを見直す
まずは、一緒に働く日本人の労働環境も含め、技能実習生に適した労働環境であるかどうか社内の状況を見直すことが重要です。
見直しの主なポイントは以下の4つです。
- 賃金は適切か
- 労働基準法に違反していないか
- 技能実習法に違反していないか
- マネジメントを変えるための社内リソースはあるか
技能実習制度は法律に準拠した管理が求められます。今一度、関係する法律に違反がないかどうか確認することが大切でしょう。不安な場合は一度社労士へ相談をしてみてください。
厚生労働省からも労働基準法の確認方法案内が出ているので、確認をしてみましょう。
(参照)確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト:厚生労働省
就業環境の見直しをしたら、マネジメント体制を確認しましょう。技能実習生は外国人です。外国である日本での労働、生活は初めての人が多く日本人と同じようにマネジメントをしても効果が発揮されないことも多くあります。外国籍人材のマネジメントノウハウが社内にあるかどうかを確認しましょう。
まとめ
本稿では、技能実習生の失踪の理由、失踪を防ぐためのソリューションについて紹介しました。
技能実習生の失踪理由は主に以下の点です。
- 技能実習生への制度周知不足、本人たちの制度理解不足
- 実習期間終了後も日本に在留する方法と考えている
- 就業企業の劣悪な労働環境、マネジメント力不足
失踪を防ぐためのソリューションは以下の点です。
- 実習制度の理解を深める
- 技能実習3号、特定技能制度の活用を促す
- 職場の労働環境の見直し、外国人材管理のノウハウを見直す
技能実習生の失踪を防ぐために重要なことは、長期的なキャリアのゴールへ向かって企業にとっても、従業員にとっても、メリットあるゴールを設定し、人材育成と労働環境を整えて成長していくことです。ぜひ参考にしていただければ幸いです。
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